Core,Frame

灰猫

第1話 ロボを夢見る

 ロボットそれは世界中の男を魅了してやまないテクノロジーの塊。ロボットそれは現代社会を支える働き手であり、工場、自動車、災害救助現場など幅広い活躍をする姿は人類の希望の星である。


 そしてロボットとは、子供の頃から人々に乗り込まれ自由に動かしたいと渇望される飛行機を優に超えるパイロット志願率を誇る昔馴染の夢。


「ああ、ロボに乗りたい…」


「まーたひろしのロボ病が始まった」


「ひろ君、顔は割とイケメンなのに…あのロボット好きじゃあね」


 今年、僕は中学生となった。


 中学校に入学したと言っても周りの人間が全部入れ替わるようなことも無く、昔から一緒に学校に通っていたクラスメイトは、相も変わらず今日も同じクラスだ。


「はー…新作のロボゲーは秋か。それまでゲームセンターに通ううしかないのか、でもなぁ」


 当然の話ではあるが、中学生の間は夜通し通う事などできない。月額2000円の小遣いでは直ぐに財布が空になるし、何より補導されてしまう。そもそも全額つぎ込んでいては、秋の新作を購入する資金が無くなってしまうではないか。


 何とかスマホの無料ゲームでロボット欲を発散できないかと検索を掛けていた所、面白そうな広告が現れたのでワンタッチ。


「あん…何て読むんだ?」


 スマホの翻訳アプリを起動させると、その文字が次第に変換されていく。


「『コア・フレーム』?」


 アーケード連携ミッションクリア型ロボットシミュレーションゲーム。ゲームが開始するのは一週間後、βテストはアーケード筐体との連携が必要だったらしく社内で行われたと記事に書かれていた。


「事前登録でロボの装備品が一個ついてくるのか。お、スマホ版をやっているとアーケード版1プレイ無料になんのか…登録だけでもしておくか」


 無料でロボゲーが出来るなら、俺としてもそれに越したことはない。どうせ一度は触る事になるのだから、今の内にホームページを覗いておこうかな。


「へー、ポストアポカリプスの世界なのか」


 ポストアポカリプスは、人類の文明が崩壊した後を指す世界観でSF回外では割と定番な世界設定だ。


 コア・フレームの世界では、進行する砂漠化に対処する為に三大国家主導の元緑地化計画が始動した。その緑地化計画では現実世界でも行われている方法の他に植物の遺伝子を操作し、成長速度やら環境適応力を大幅に強化することに成功。さらに複数の植物と交配できるようになった植物『マザー・プラント』は、次々と砂漠を緑の海に変えた。


 しかし、マザー・プラントの成長は予期せぬ方向に進む事となる。


 緑の海は、文明社会をも呑み込んだのだ。


 瞬く間に街や都市を陥落させる植物に世界は恐怖した。除草剤、火炎瓶、爆薬あらゆる手段でマザー・プラントを排除しようと試みたが、結局のところ頓挫。人類は最後の手段を用いることなった。


 核の途轍もないエネルギーは、マザー・プラントを焼き尽くした。だがその代償は余りにも大き過ぎたものだった。


 全人類の人口、その半数がこの一件で消失。また生き残った者達も行方不明者が多く、政府を信用できなくなった者達は自分たちで小さなコロニーを作り隠れ住んだ。


 人々を集め国家を維持しようと画策する各国でったが、頭の痛い問題が差し迫っていた。マザー・プラントの子供たち、『ウィード』の発生である。


 ウィードは植物に寄生する特性を持つ種子で、寄生された植物は急速に成長し変容。二足歩行の木人となって動物に襲い掛かり、動物に種子を運搬させる習性を持つ第二の人災であった。


 建築、建設、農業、ウィード対策そして、食料や物資を求めて集まって来る盗人。それら全てに対応する為に三大国共同の元開発されたのが、凡庸搭乗型装甲機『コア・フレーム』である。


「やっとロボが出て来た」


 コア・フレームは、コックピット部分であるコアと稼働部分であるフレームで構成される機体であり、コアをフレームに搭載する事で様々なシチュエーションに対応することでフレームを選択する事が出る。


 その実情はコア部分は共同開発だったが、互いに敵国になりかねない相手に武器開発のノウハウを教えるなんて以ての外というお寒い事情があったみたいだけど。


「ふーん、コックピット共有でいろんな機体を動かせるのか。あー、だからアーケードと連携なんだな。コックピット型の筐体なら、実際に操縦する気分を味わいつつコックピットが共有だから、どんな機体を使ってもコックピットが同じ事で気分が萎えてしまう様うなことは回避出ると…!」


 さらに言ってしまえばコアが強度開発なのだから、どこかでフレームを鹵獲できれば、変に弄る事無く使用できる。これはアニメなどで、敵から奪った機体を何で操縦できるのかに対する強い回答である。


「こう、架空の歴史でもロボやメカが絡むと途端に楽しくなるんだよな…」


 ゲーム開始まで一週間ということもあり、ホームページには公開された情報が多く記載されている。


「お、、初期ロボ!」


 チュートリアル後に貰える初期機体三機が画像付きで載っていた。



型式番号/A-01

機体名/ウィードキラー

機体全長/約4.50m

機体重量/約12t

素材・材質/マギニック、エスタニウム合金

出力/レベル1

主兵装武器/A-01型手持ち火炎放射器

副兵装装備/A-S-05手榴弾×3


型式番号/N-01

機体名/護鬼

機体全長/約6.0m

機体重量/約20t

素材・材質/マギニック、エスタニウム合金

出力/レベル1

主兵装武器/N-01型ハルバート

副兵装装備/N-01用頭部双口型火炎放射器×1


型式番号/F-01

機体名/ガーディン

機体全長/約4.0m

機体重量/約10t

素材・材質/マギニック、エスタニウム合金

出力/レベル1

主兵装武器/F-01型手持ち式火炎放射器×2

副兵装装備/F-01型腕部固定式クロスボウ×1



「くっはぁー、堪んねぇな!」


 周りがざわついているがそんな事より、機体の設定が乗っているのが嬉しくてしょうがない。型式番号の意味は分からないし、聞いた事もない素材を使っているみたいだけれど、もとよりSFとは空想科学の世界だ。こんな鉱石があったとしたらと仮定されていると言えば、文句も出ない。


 だけどスマホ版の方は、基地建設。ストラテジーの方がメインである様で、基地を拡大して機体のパーツを生産して機体をカスタマイズしたり、作った機体をアーケード筐体で乗り回したり、アーケードのプレイヤーが基地に攻撃を仕掛けてきたりと面白そうな組み合わせが出るわ出るわ。


「ちょっと楽しみになって来たかも…」


 スマホを片手にニヤニヤとした顔を辞めるのは、担任がホームルームを始めるその時まで続いた。

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