作者さんのクセのありそうな珈琲愛エピソードだけでなく、ファンや絵師さんの話までレビューに書かれています。もちろんお話を読みたくなる台詞やしかけもあります。あとがきも気になる。早くにこの世を去ったこの作者さんに何があったのか、誰も知ることはできず。ネタバレになるからとレビューに書いてはくれないお話を読むことは叶いません。レビューってすごい、でも難しい。単純にそう思いました。
玄野達樹という作家を知る人は少ないだろう。なにせ作品が少ない。一作だ。かく言う自分もこのレビューで知ったわけだし。一作しか作品を残していないゆえ、作家と作品を同一視してしまいがちではあるけれど実際のところはどうだったのだろうか。そういう風に思わせるほど、このレビューの中に玄野達樹の足跡は残されている。存在すらしなかった一人の作家と一冊の本を、幻想として思い出させる。まさに架空レビューの醍醐味と言えるレビューである。