SECOND—二度目の恋なら—

@sadprinncess

プロローグ「過去|《キズ》」

 誰の心にも、決して癒えることのない傷が残されている。


 その傷口はいつだって鮮明で、振り返る幻はいつだって生々しい。


『———は決して実らない』


 ならば、二度目は…?


 二度目の———は、実るのですか…?


 自分には無縁なものだと思っていた。

 他人事だと思っていた。

 それこそ、テレビや漫画の中の出来事だと思っていた。


 それは思っていたよりもずっと、ずっと素敵な気持ちで———

 ずっと、世界がキラキラしていて。


 胸がとっても、飛び跳ねるようにときめいていて———


 だから、きっと過去《キズ》になった時。


 それは思ったよりも辛くて、切なくて———

 ずっと、世界がくすんでしまっていて。


 胸がただ、張り裂けてしまいそうなくらいに苦しかった———。


 生きているのも辛かった。


 けれど、乗り越えればまたきっと世界は色を取り戻すものだと思っていた。


 時間がいつか、傷口を塞いでくれる。


 忘れて、思い出せなくなって、気が付いたら気にしていないものだと

思っていた。


 誰もがそうだから、そうだと思っていた。


 けれど、その傷口はなかなか塞がってはくれなかった。


 傷跡は残ったままだった。


「————なキミが好きだよ」


 それは呪われた言葉。


「キミは今までで一番————だったよ」


 それは呪いに変わった瞬間。


「過去形なんだ?」


 それは気持ちを手放してしまった思い出。


 あの日に残された、呪いの言葉———。

 あの時から鼻を突く傷口の膿んだ臭い———。

 あの場所に置いて来てしまった想い———。


 あの日、あの時、あの場所に置いて来てしまった感情の名前を、

未だ口にすることが出来ずにいる。


 そのくせ、あの時一緒に捨てたはずの黒い感情だけは心に深く

根を張っていて、容易く思い出すことはできた。


「秋也———」


 誰かが自分の名前を呼ぶ声がした。


 もう、誰だっていいから。


 俺をいい加減、許してください。

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