第303話 井宮の隠し物
「うーむグラウンドで少し騒ぎを大きくしていたからな」
「まぁそうね、皆気になるわよね」
「そりゃああんな事があったし、圭ちゃんもカッコいいから注目されちゃうわよ」
「なんでこんな視線の中で飯なんて食わなきゃいけねーんだよ。全く落ち着かねー」
一般開放されている教室なので他の生徒の家族や生徒がいるのは全く問題ないのだが、なぜか皆俺たちを遠目で見ながら昼ご飯を食べていた。
まぁうちの家族は皆顔立ちが整ってるからな……家族で遊園地に行ったときもこんな感じだったし。
「それより圭司」
「どうしたの父さん?」
「井宮さんと高城さん、どっちがお前の彼女なんだ?」
「ぶふっ!!」
思わず俺は飲んでいたお茶を噴き出した。
「は、はぁ? い、いきなりなんだよ……」
「ん? 違うのか? お父さんはてっきりどっちかと付き合っているんだと思ったんだが?」
この親父はなんで自分の恋愛には疎いのに他人の恋愛には敏感なんだよ。
てか息子にそんなデリケートなことを聞くな!
「そうよ、一体どっちと付き合ってるの? お母さんに話してみなさい」
「何言ってるのお父さんお母さん、圭ちゃんの彼女は私だよ?」
「とりあえずお姉ちゃんは病院に行こう」
「脳外科? それとも精神科かしら?」
姉貴は相変らずだが、どうやら両親は息子の恋愛事情が気になっているらしい。
まぁ、確かに午前中の競技は目立ってたしな……。
そのせいか度々殺気を感じるし。
「まぁ付き合うとかそう言うのは良いが、二股はダメだぞ? それは男して絶対にしてはいけないことだ」
「良く言うわよ。散々色んな女引っかけて私に心配を掛けさせたくせに」
「ん? 俺はそんなことなかったぞ?」
「お父さんは自覚無く女の子を落とすから質が悪いのよ、私がどんだけ苦労したか……」
昔を思い出してため息を吐く母親。
この父親のせいでかなり苦労したようだ。
なんて事を考えながらおにぎりを食べていると……。
「あ、いた」
「ん? 井宮、どうしたんだ?」
「アンタの両親に挨拶に来たのよ。お世話になったし」
「あぁそう言う」
井宮の登場に父さんと母さんは目を輝かせる。
「井宮さん、久しぶりだね」
「体操服姿も似合うわねぇ~」
「ご無沙汰してます。この間はお世話になりました」
丁寧に挨拶を返す井宮。
しかし、そんな井宮を一人だけ敵意むき出しで睨みつけている人がいた。
そう、姉貴である。
「別に来なくても良いのよ? 泥棒猫さん」
「お姉さんも居たんですね」
「いるわよ? 圭ちゃんに変な虫が着いたら困るもの」
「お姉さん自身も大きな害虫だと思いますけど?」
「誰が害虫よ!」
姉貴とは相変らずだな。
まぁ、家族井宮はうちの家族と面識あるし、マメな性格だから飯食ってから一言挨拶にきた感じなんだろうな。
丁度俺も食い終わるし、井宮とこの注目地点から離れるのもありだな。
「井宮、飲み物買いに行こうぜ。午前中で飲み切っちまった」
「アンタがぶがぶ飲んでたもんね」
「喉渇くんだよ。それじゃぁ俺戻るから」
「あぁ、午後も頑張れよ」
「井宮さんも頑張ってね」
「圭ちゃんどこに行くの! お姉ちゃんも連れて行って!!」
そう言って俺に抱きつこうとする姉貴を華麗に避けて俺は井宮と飲み物を買いに自動販売機に向かった。
「あんたの家族は注目の的ね」
「まぁな」
「声かけようとしたら直ぐに家族の所行っちゃうし」
「え? あぁ悪い」
「まぁ……良いけど」
なんだか歯切の悪い井宮。
いつものこいつらしくないと思っていると、俺は井宮が何やら小さい弁当袋のような物を持っていることに気が付く。
いや、まさかな。
まさか料理が出来ない井宮俺に飯とか作ってくるわけねぇよな?
あ、でもこの前食ったのは普通に美味かったし……。
拗らせイケメンと四人の美少女 Joker @gnt0014
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