そらの向こうにあるカクテルバーで、ひとり静かにグラスを呷る、死神のレイ。
その表情には、哀しみのほかにも苦悩が浮かんでいた。それは、自分の運命に抗うことができない諦めにも似た想いだった。
そこに、愛の神が同席を提案してきた。その神は、自分の届けた愛で、ひとりの女性を死に追いやったと……。自分も、神としての宿命には抗えないのかと……。
そんな想いを抱える愛の神が、死神に、ひとつの提案をする。
死神に、次に手を差しのべる者のそばにいて、小さな幸せを届けてあげなさい……と。
雲をはらい、陽の温もりを届け、その窓を尋ねるモノを呼び寄せた。
最後の時、死神の姿が見えていないはずの人間が、幸せだったと呟く。
せつない物語の中に、小さな、そしてかけがえのない幸せが、たくさん詰まっている。死神の苦悩が、とても優しく映る。零した涙は、とても綺麗……。