第15話:暗殺
俺はダインジョンで集めた素材で作った防具に身を包んだ。
鎧下着、革鎧、鎖帷子、鱗鎧、その全てが今手に入る最高の素材で作られているばかりか、数多くの魔晶石で補強され、魔法陣の力の元になっている。
これで自分の魔力を使わなくても、数多の魔術を発現できる。
いや、敵の不意討ちに自動的の反応してくれ、防御魔法を展開してくれる。
更に優れているところは、俺の使いきれない余分な魔力を、自動的の魔晶石に蓄えてくれる機能までつけてある。
自画自賛はそれくらいにして、同じく最強の武器を手に取る。
刃が鋭利なのは当然として、刀身はもちろん柄や鍔にも魔法陣を刻み魔晶石を埋め込んでいるから、防具ほどではないが、魔術を発動できる。
まあ、今回は派手な魔術を使う心算などないので、消音、消気、消臭、消身、魔法無効、対魔力、対物理などの補助魔術を事前に発動させておくだけだ。
俺は勝手知ったるゲセルト王太子の寝室に忍び込んだ。
レントン王国の王都、王城、王宮の防御魔法など、今の俺には全く意味がない。
今までの突出した魔力でも侵入は可能だったが、ダンジョンで手に入れた膨大な魔晶石の魔力を活用すれば、十分な余力を残して侵入できた。
「あああ、殿下、殿下、殿下、愛しております、殿下」
ゲセルトと女が激しくむつみ合っている。
女は恐らくチャント王国の第一王女ミケルネだろう。
よほどお気に入りで、寝食を忘れて愛欲に耽ったのか、眼の下に隈ができている。
だが、油断は禁物だ、俺は小石二つを自分とは違う場所に浮かせて、十分な殺傷能力の速度と重さを与えて放った。
グッシャ
「ワッハッハ、馬鹿め、そう簡単に俺様を殺せると思うなよ……
なんだ、ちっ、憶病な奴め、どこだ、どこにいる?!」
恐らく反射魔法を展開していて、攻撃する者に跳ね返して、返り討ちにする心算だったのだろうが、そうはいかない、俺はそんな迂闊な人間ではないのだよ。
問題は敵にどれくらいの魔力量があるかだ、それによって攻撃方法が変わる。
王太子の立てられるくらいだから、それなりの魔力があるだろうが、今の俺が負けるとは思えない。
危険なのは城を護る魔晶石群と連動している場合だが……
俺は千の小石を魔法袋から取り出し、居場所を見つけられないように細かく移動しつつ、一斉に小石を放ち、魔術の穴を探る。
魔術の穴、綻びを見極めて、魔法陣魔術を破壊無効にする方法を探る。
(ここだ!)
声には出さず、心の中だけで叫んで、二人の防御反射魔法を全て破壊無効にして、一気に近づいて心臓を貫き、返す刀で首を刎ねる。
「さて、後はチャント王家の動き次第だな。
向こうが諦めるのなら、無駄な争いは止めないと、大切なロイドとの誓いを破ることになる」
侯爵令息は婚約者の王太子を弟に奪われました。 克全 @dokatu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます