第52話 枷を外された獣
ユウはロイドから送られる感応波に苦しみながらも必死に食らいつく。その一方で少しずつ感覚が研ぎ澄まされていくようにも感じていた。
そんな不安定なユウとは対照的にロイドは満足そうな笑みを見せ<カラドボルグ>を巧みに操る。
<Gディバイド>から距離を取ると肩アーマーの一部が開き三つのレンズが露出する。
『捉えたっ!!』
間髪入れず六つのホーミングレーザーが発射され、不規則な軌道を描きながら全弾が白いオービタルトルーパーに向かって行く。
「ちぃっ!」
ユウは舌打ちをすると機体前面のバーニアを最大にして減速、二発のレーザーを回避すると背部のメインスラスターを最大急加速し残りを回避した。
一瞬の間に急制動と急加速をしたことで身体に凄まじいGが掛かるが、それをものともせずユウはすかさず敵機に照準を合わせ反撃に移った。
「これで落とすっ!!」
ブラスターライフルの銃身が前方にスライドしブラスターモードに移行、プラズマを帯びた超高出力の赤いビームを発射した。
その際、銃身内部から露出した放熱フィンが赤熱化し強制冷却を開始する。
狙いを定めて撃った
『その砲撃のデータは収集済みだ。ギリギリで回避すればビーム周囲のプラズマで機体を裂かれる。――だが、射線を読み違えなければ当たりはしない!』
今度は<カラドボルグ>が高速で動きながらホーミングレーザーと
ユウはメインスラスターを最大にして追尾するレーザーを振り切るが、そこにライフルから放たれたビームが直撃した。
『やった? ……いや、どうやら防がれたようだな』
<カラドボルグ>の攻撃は<Gディバイド>が左腕に展開したターミナスシールドで防御されていた。
ターミナスシールド発生器から発生したのは、高密度のターミナス粒子を半球状に展開した盾でありビームを霧散させた。
「躱しきれなかったか。こっちの回避パターンが読まれているのか?」
ユウは奥歯を噛んで前方で優雅に浮かぶ紫色のオービタルトルーパーを睨む。
額から前方にせり出したアンテナブレードが攻撃性を感じさせ、青いデュアルアイが淡く光り自分を見つめている。
愛機である<Gディバイド>と同等の性能を持つ敵と対峙し、戦況が拮抗する中ユウは覚悟を決めるのであった。
「ライトニングヴァイオレット……想定を上回るパイロットだ。このままじゃ勝つのは難しいな。――<Gディバイド>、今お前の
バックパックに設置されている2基の大型メインスラスターと脚部スラスターの出力が上昇、両肩アーマーの一部が外側にスライドし露出した放熱部から熱と共に余剰粒子が排出され始める。
下腿外側の放熱カバーが開き、内部に収納されている放熱フィンが現れ、そこからも放熱と余剰粒子の排出が開始された。
白い死神は全身から赤いターミナス粒子を放出し始め、周囲の宇宙を赤い光で照らす。
そのコックピットでは瞳に淡い光を灯したユウが眼前にいる敵を睨み付けていた。
一方のロイドは<Gディバイド>の雰囲気が変化した事、それとユウから発せられる感応波が強力になった事に驚きを隠せないでいた。
『これは何だ? 機体が変化したと思ったらパイロットのプレッシャーが強力になっただと。――ふっ、面白い。その実力を見せてもらうぞ、白い死神!!』
<カラドボルグ>から再びホーミングレーザーの一斉射とTBライフルの連射攻撃が行われる。
リミッターを解除した<Gディバイド>はその場に余剰粒子で構成した残像を残し、先程までとは段違いの機動性で動き回る。
ターミナス粒子に反応し相手を追尾するホーミングレーザーは<Gディバイド>本体ではなく、周囲に撒かれた残像を誤射し始めた。
『残像に照準が狂わされているのか!? ちぃっ、やってくれる!!』
ロイドは焦りを覚えつつ機体を高速移動させ、赤い衣を纏った<Gディバイド>を狙い撃つ。
しかし、スピードを落とさずに急激な方向転換をする死神の動きを捉えきれずビームは空を切る。
『馬鹿な! あのような動きをしてパイロットが無事で済むわけがない。いくら肉体が強化されているネクサスでも限度があるはずだ。なのに――』
<Gディバイド>は一定の距離を保ちあらゆる方向からブラスターライフルを連射する。
最初は難なく躱していたロイドであったが四方八方から狙って来るビームに次第に対応できなくなり何発かは機体をかすった。
『この私と<カラドボルグ>が機動性で負けているというのか。……いや、まだ終わらん!!』
サブスラスターユニットを解放し<Gディバイド>の包囲網から抜け出した<カラドボルグ>。
ロイドが後方から追って来る白い死神を確認すると、少しずつ距離を詰めて来るのが見える。
『こちらのハイマニューバに追いついてくるか。ここまでやるとはな!!』
ロイドは機体を旋回させ自分を追って来る<Gディバイド>に突撃する。二機はTBセイバーを装備して斬り結ぶ。
<カラドボルグ>のコックピットモニターには瞳が淡く光るユウの姿が映り、ロイドはその姿を見て確信した。
『やはり君はネクサスだ。その光る瞳は体内のナノマシンがターミナス粒子に反応し活性化している証拠。木星圏でも力のあるネクサスの開発に成功していたようだな!』
「……敵は破壊する」
ユウの抑揚のない声と共に<Gディバイド>のフェイスマスクが上下に分かれ放熱部が露出すると強制排熱が始まり放熱部が赤熱化する。
『コォォォォォォォォォォォォ!!』
<Gディバイド>の排熱音は獰猛な獣の様な唸り声となって<カラドボルグ>のコックピットで再生された。
そのプレッシャーにロイドは気圧され、動きが一瞬止まるとコックピットに衝撃が走る。
<Gディバイド>の蹴りが<カラドボルグ>の腹部に入り、その紫色のボディを蹴り飛ばした。
反動を利用してその場から急速離脱した<Gディバイド>は胸部レーザーガンで牽制を交えブラスターライフルで敵を撃つ。
ロイドは体勢を直しながらターミナスシールドで<Gディバイド>の攻撃を凌いだ。
『私がここまで敵の攻撃を受けるとはな。屈辱を感じざるを得ない。……しかし!』
その時、ロイドの瞳が淡い光を宿した。そして<カラドボルグ>のハイマニューバモードで急接近し再びビーム刃を交えるのであった。
『私も
白き死神のGディバイド 河原 机宏 @tukuekawara
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