純恋愛
いつもと同じようで違う朝。
朝7時に起き、犬の散歩を済ませ、自分でお弁当を作る。
そして、家族分の朝食を用意し、家族みんなで食卓を囲む。
いつも通りの朝だ。
朝食後は朝のニュースを見て時事ニュースを頭に叩きいれる。
そして、叩き込んだニュースを自分なりにまとめ、壁に向かって話す。
ちなみに何故こんな事をしているのかというと、私の将来の夢がアナウンサーだからだ。
母が昔アナウンサーをしていて、その姿を見て、私もアナウンサーになりたいと思ったのがきっかけだ。
元々活舌も悪く、うまく話せなかったけれど、最近はうまく話せるようになってきた。
そして、準備が出来次第家を出て、学校へと向かう。
ここまではいつもと同じ朝である。
しかし、いつもは駅で待ち合わせをしている薫子もいない。
高校の入学式以来、初めての一人電車だ。
いつも同様、会社員の方や他校の生徒が乗る為、電車は満員状態だった。
「いつもなら薫子がいるのに……」
私は、何故か分からないけれどソワソワしていた。自覚もなく勝手に。
電車は、私の気持ちなんてお構いなしで次々と駅に止まる。
いつも彼が乗ってくる駅まで一駅。私のソワソワはピークに到達する寸前だった。
「次は、桜ケ丘。桜ケ丘――」
ついに、彼が乗車してくる駅に到着した。
しかし、電車に乗ってくる人の中に、彼の姿は無かった。
「やっぱり、別の電車で行ったんだろうな……」
私は、少ししょんぼりしながら、学校近くの駅に到着するのを待った。
「はぁ。そう簡単には一緒に登校なんて出来ないよね」
私は独り言を、誰にも聞こえない程度の声で漏らした。
「おはよう……」
「?!」
しかし、改札を出た私の目の前には彼がいた。
「どうしてここに?」
「昨日一緒に学校に行こって言ったのは君だろ?だからここで待ってたんだよ」
「そ、そうだったんだ。あ、私が集合場所を言わなかったから、こうゆう事になっちゃったんだよね」
「そんな事は無いよ!」
どこまでも優しい、紳士のような彼を見て、私は静かにときめいていた。
電車は、学校近くの駅に到着した。
「いこっか!」
「ちょっと待って。一つだけ言いたい事があったんだ」
「言いたい事?」
「これからも俺と一緒に登校してくれないかな。2人で……」
私の想いは彼に届いたのかもしれない。いや、届いたのだ。
名前も、クラスも知らない彼にやっと届いたのだ。
「うん……」
「今更だけど、俺の名前は遊馬。よろしく」
「私は実咲。よろしくね」
私のたった5分の楽しみが、純恋愛へと変わったのだ。
5分後に始まる純恋愛 西宮ユウ @Nisimiya_Yu
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