待ちきれない夜

「あ~~~言っちゃった……」


名前も知らない、私がずっと追いかけている彼と電車で鉢合わせになり、この機を逃してはいけないと思い私は言ったのだ。

『明日、一緒に学校行ってくれないかな……?』と。


「こ、これってデート?いや、ただ一緒に学校に行くだけだもんね、デートじゃないよね……」

「フ~~~~」


私は少し落ち着くために深呼吸をした。

自分でも分かる。鼓動が早くなっているのが。想いが溢れ出そうなのが。


しかし、そんな気持ちとは裏腹に私は我へと返される。

「あれ?明日どこで待ち合わせとか決めてなかった」


そう。彼が電車から降りるタイミングで咄嗟に言ったため、詳細などは全く決まっていない。

痛恨のミスだ。

「どうしよう……」


いつもの時間、いつもの電車に乗れば会えるかもしれないけれど、もしかしたら彼が別の電車に乗るという可能性もある。

それか、私がいつもの電車に乗り遅れそれどころでハ無くなるという可能性もある。

生憎、薫子は日直で早めに学校に行くと言っていたのでそれは大丈夫。


「考えても仕方ないよね。いつも通りに行こう」


私は自分の中で結論を出した。


「実咲?ご飯よ~?」

「は~い。今行く!」


こうしてドキドキの夜は更け、私にとっての新しい朝が来る。

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