放課後

放課後は結構好きだ。

朝や昼のような楽しみは無いけれど、教室に誰もおらず、窓から微かに差し込む夕日がとても綺麗。

私は、そんな放課後の教室が好きだ。


「1人っていいな」

私は一人が好き。クラスでグループが出来ているけれど、そういうのは苦手だ。

だから薫子としか話さないし、関わらない。


けれど、彼とは関わりたい。

そういう気持ちはずっとある。


「よし、これで終わりっと。先生は人使いが荒い。生徒をなんだと思っているのか」

放課後が好きで、1人の教室が好きだから、という理由で居残っていた訳ではない。

担任の先生に、教室の掃除や職員室まで物を運ぶよう頼まれたので居残っているのだ。

何せ、今日は日直だから。

生憎、もう1人の日直だった佐々木君は、熱でお休みという事で、私1人でしなければいけないのだ。


「今日の晩御飯はなんだろな~」

私は駅までの道のり、そんな事を呟きながら歩いていた。


「まもなく電車が発車します」

「やっば!」

私はアナウンスを聞き、急いで電車に掛け乗った。

「ま、間に合った。ハァ、ハァ、ハァ」

「大丈夫?」


すると、息を切らし、下を向いている私に話しかけてくる人がいた。

「だ、大丈夫で――」


彼だった。紛れもなく彼だった。

私が朝の電車の中で見とれていた、昼休みに必ずサッカーをしている彼だった。


「あ、だ、大丈夫なんで……」

「よかったらここ座って。俺次で降りるから」


知っている。あなたが次の駅で降りる事。だって、毎朝あなたに見とれているのだから。


「じゃあ、気を付けて!」

「あ、あの……」

この機を逃せば、もう話せない。私はそう思った。

「明日、一緒に学校行ってくれないかな……?」

「い、いいよ」


募った思いが今、彼の元へと流れだす。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る