第14話、引っ越し

すみません、不定期に変更です。


◇ ◇ ◇


夜の仕事は、不定にだが確実にやってきた。

だが、斡旋屋のターゲットが本当に悪人なのか確認する必要がある。


そんなこちらの気持ちを察するように、トコウニは悪行を具体的に話してくれた。


今日のターゲットは、高利貸しの商人だった。

こいつは、若い娘のいる相手にしか金を貸さない。

そして、支払いが滞ると借金のかたに娘を連れて行くのである。


アミは弟と妹を寝かしつけると、闇に潜った。

闇の中で俺はアミの全身を覆う。


そして闇の中から始末するだけの簡単な仕事だ。


こうして、アミの睡眠は守られるようになった。




昼の仕事も順調である。


商業ギルドのアミノクリーンは一年先まで予定が詰まっている。

服飾組合も城への実績を反映して好調であり、リンカ堂のスイーツもうなぎ上りだ。

夕海亭も客足が途絶えず、週一の城通いにも慣れてきた。



「ねえアミ」


「はい」


「そろそろ、私の側近になっくれてもよいのでは?」


「そのお話は、ギルドと調整できたのでは?」


「これだけアミノクリーンが売れてしまうとな……

そうだ、夜は時間が空いているだろう」


「妹と弟がおりますので無理です」


「……そうだ!

兄弟も一緒に、城に住めばよい。

食事は食堂で食べ放題だし、優秀な指導職もいる。

読み書きに計算。一般常識に礼儀作法。

私の教師たちは優秀だぞ。どうだ」


「それは……魅力的なお話ですが……」


「それに、城で学んでおけば、働き口を探すのも簡単だぞ。

なんなら、城で働けばよい。

そうだ、そうしろ……、なっ」


『確かに、城に住んでいれば、襲われる心配もなくなるし、何より教育にはいいかもな』


「わかりました。

よろしくお願いします」


こうして、アミ兄弟は城に住むこととなった。

商業ギルドの住まいも、遅くなった時のために確保しておく。

というよりも、夜の仕事の時はこっちで寝ればいい。



「ね、姉ちゃん、城って住めるところなのか?」


「バカね。お城は王様が住んでいるのよ」


「俺たちも王様になるのか」


「うーん、ちょっと違うかな。

でも、あんなに広いところだと、迷子にならないかしら」


「姉ちゃんが迷子にならないんだから大丈夫だよ」


「でも、お姉ちゃん、トイレとかあるのかな」


「大丈夫よ。

トイレ専用の部屋があるから」


「えっ、部屋とトイレって離れてるのか」


「そうよ。だから、これまでみたいに、ギリギリまで我慢しちゃ駄目よ」


「おいら、自信ないぞ……」

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道具袋に転生したんだが神さまに文句を言いたい‼ モモん @momongakorokoro3

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