再会
急いで家に帰るとリビングから楽しそうな声が聞こえてきた。
駅から走ってきた為、乱れてる服と髪を整える。最後に汗臭くないかも念入りに確認し、リビングの扉を開けると一人見知った人物がいた。
「詩織ちゃんお帰りなさい。そんなに慌てて帰ってこなくても良かったのに」
「こんにちは、歩さん」
くすっと笑う上品な女性は有希の母親だ。落ち着いた色のスーツに見に纏っている姿はいつ見てもカッコいい。IT関連の女社長で良く雑誌にも載っている。
彼女の隣にはキラキラした男子学生がいた。彼と視線が合うとペコリと頭を下げられ、詩織もペコリと返した。
詩織はその子から目が離せなくなった。リビングの照明に当たる彼の髪が金髪に見えた。瞳はダークブルーなのか青味かかっていて、昔読んだ絵本に出てくるザ王子様と言ってもいいほど綺麗な男子学生だった。
「詩織ちゃんごめんね。この子来年から大学生なんだけど受験が不安みたいで勉強を教えてあげて欲しいの」
「こんな子でお役にたてれば良いんだけど」
「大丈夫よ詩織ちゃん優秀なんだし」
穏やかに有希の母親、歩さんは笑った。心配そうな視線を実母は送ってくる。確か今日の事を忘れていたし自分に家庭教師が出来るかって言われたら不安しかない。
しかし、受験生の前で不安な表情、態度は出せない。私も受験生の頃は不安で安で仕方がなかった。
「よろしくお願いいたします。一緒に頑張りましょう」
「はい。よろしくお願いいたします」
先程、金髪に見えた髪は近くで見ると薄い茶髪で動くたびにサラサラと動きに合わせて靡いていた。
「詩織、あんたの部屋掃除してあるから早く勉強教えてあげなさい」
「あ、はい」
詩織は彼を2階にある自分の部屋に案内する。母の言った通り掃除はしっかりとされていた。元々自分は部屋に物を増やすのは好きではなかった。必要な物だけシンプルな部屋が好き事もあり、見られて困る物はない。
本棚には研究に使う資料とデスク。。ベットの前には小さなローテーブルが置かれている
「改めまして、横井詩織です」
「………」
先ほどの柔らかい雰囲気とは違い、彼はムスッとしていた。彼はドスッと音を立てベットに腰を落とした。
「まだ気づかない?」
「えっ?」
「俺の事覚えてないの?それに未だに瓶底みたいな眼鏡かけてるってビックリだね」
覚えてないの?と聞かれても詩織にはこんな綺麗な男の子に会った事はなかった。記憶を辿るが思い出せない。
未だに自分の事を思い出してくれない詩織に対し、佐伯祐は苛立ちを隠せなかった。目の前で真剣に思考を巡らせている彼女は自分に辿りついてくれない。チッと舌打ちをし詩織の腕を掴み、祐は思い切り引っぱった。
身体が浮遊したと思った瞬間ベットに押し倒され詩織の思考は停止した。目と鼻の先に男の子の顔があった。至近距離に異性の顔がある事に慣れていない詩織は耳まで赤く染まる。そんな彼女をみて祐は耳元で囁く。
「佐伯祐だよ……お姉ちゃん僕の事忘れちゃった?」
意地悪王子はストーカー? KANA @bluesky-sky
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