第9話 付録・バブルの崩壊
付録:失われた10年、20年。
バブル経済:1980年代、日本経済は自動車・電気・機械等の輸出産業を中心にして、絶好調であった。これは日米貿易摩擦となって、アメリカは日本に内需主導の経済を要求し、円高誘導で合意(プラザ合意)した。前川レポート(日銀総裁)で、政府は10年で430兆円の公共投資を中心とした財政支出をアメリカに約束した。金額まで明示して一国の経済政策を約束する例はない。また、円高不況を過剰に恐れ、金融緩和に踏み切った。これらが重なってバブルを引き起こしてしまった。外圧=アメリカ圧に弱い、過剰反応・過剰対応の悪しき例である。
勿論、損失補填を約束したような違法とも言える証券会社の営業、悪徳地上業者にまで貸し込んだ銀行融資、利益最優先の営業の在り方にも問題があった。
バブル経済の崩壊:日銀はバブル潰しとして、1990年、土地取引の総量規制、翌年には金融引き締めに転じた。株価暴落・土地価格の急落となって、証券・土地取引に貸し込んでいた金融機関の多額の不良債権となって、金融危機を生んだ。政府は1999年12月には公的資金の注入枠を70兆円にまで積み増すことを決定した。問題はこの年数で、10年近くを経過している。この遅れの遠因となったのが、住専処理問題であった。
住専問題: 1970年代、住宅需要は旺盛であった。そこで、大蔵省(現・財務省)が主導、大手銀行各社を出資者として、個人向けの住宅ローンを専門に扱うノンバンク、住宅金融専門会社8社をスタートさせた。トップは大蔵省の天下り、幹部社員は母体行より出向、昨日までライバル銀行だった同士の寄り集まり会社だった。当時大手銀行は企業融資が中心で、住宅ローン等の個人融資のノウハウを持たなかった。80年代に入って企業は転換社債等によって、銀行借り入れでなく資金を自前調達出来るようになった。銀行は個人融資分野にも踏み込まざるを得ず、母体行は住専の融資先の優良顧客には銀行ローンへの借り換えを薦め、住専の業務分野を侵食していった。その分を不動産業者や開発業者などリスクの高い融資を住専に押し付けた。結果、回収不能の不良債権が住専全体で約6兆5千億円にものぼり,1995年には8社中7社が行き詰まった。95年政府は住専処理に6850億円の公的資金投入を決めたのである。
日銀に不動産向け貸出枠を削られた銀行は、それまで住専に貸し付けていた資金を一斉に引き上げた。この分を埋める形で貸し込んだのが、農協系資金で、その合計額は5兆6千億円で住専の総債権額全体の44%を占めていた。これには農林省と大蔵省の間で損失責任の密約がなされていた。大蔵省の天下り先としての住専、住専に対する母体行の無責任さ、数々の不祥事、癒着関係が明らかになって、何故ノンバック(貸金業)に公的資金を注入するのかと、猛烈な世論の批判を浴びる結果となった。これがトラウマとなって、政府は公的資金の注入に及び腰になったのである。銀行への本格的な公的資金注入制度が整備されたのは、長銀が破綻した際の1998年であった。かれこれ10年が経過していた。大蔵省は住宅需要や個人融資に取り組むように行政指導すれば済んだ話で、銀行もノウハウがなければ、出来るように企業努力をすべきではなかったか。それだけの話のように思われる。失われた10年、20年は、若い人の就職氷河期となり、希望しない非正規雇用者の増大となって、確実に日本を蝕んでいる。
『ポスト・コロナ』 希望を託して 北風 嵐 @masaru2355
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