ヴァルメリオ -赤ー

小鳥遊ブルジョアジー

プロローグ

 いつの間にかうっそうな森の中で寝ていた。

 確か大学からの帰宅途中であったはずなのに電車に乗ったあたりから記憶がないし、本当に電車に乗ったのかも定かではない。

 僕の名前は伊能圭人、東京の大学に通う普通の大学生であった。

 彼女は万年いたことはないし、成績だってよくも悪くもない。

 本当に普通の大学生だった。

 さっき、目覚めるまでは・・・。

 なんとなくわかるのは、ここが現代の日本ではないということ。

 僕が知らないだけかもしれないけど、こんな森は現代日本に存在しない。

 まず、木の大きさが異常で、胴回り10メートル、高さ50メートルのまるで神木のような木が佇んでいる・・・のではなく、乱立している。

 オオカミの遠吠えより狂暴そうな鳴き声が静かな森に木霊している・・・のではなく、四方八方から前の音をかき消すように響いている。

 ちなみに動物の種類は1種類ではないようだ。

 そして最後に真紅の猫がいる。

 なぜか僕の腹の上で寝ている。

 この存在が僕にここが日本、否地球でないという結論に達せさせた。

 こんな真っ赤な猫なんて見たことないし、しまいにはしっぽが燃えていて、比叡山の不滅の法灯のごとしである。

 ちなみにしっぽの火がたまに服に当たってるが服は燃えていない。

 まさに法灯である。

 かわいい寝顔につられて撫でようと手を動かしてみるが全く動かない。

 金縛りの気配はないので、どうやら僕は相当疲れているらしく、体のどこを動かそうと試みても一向に動かない。

 諦めるとともに睡魔が襲ってきた。

 今のさっきまでぐっすりと寝ていたのにこんなこと思うのはおかしいのかもしれないけれど、ここで寝るのはまずい気がする。

 そんなことを思いつつも睡魔に負け、瞼が重くなる。

 瞼が完全に落ちる寸前、しっぽの火が動いたような気がした。




 この日、2人の人物が失踪した。

 

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ヴァルメリオ -赤ー 小鳥遊ブルジョアジー @tpop

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