最終話 下宿の娘さんに恋した結果

太一たいち先輩。キス、もう一度してみませんか?」


 とにかく、明日から、恋人として、再び穏やかな日々が始まる。そう思っていたところに、穂乃果からの燃料の投下。


 俺はといえば、心拍数が急上昇。心臓の音が聞こえる気すらしてくる。


「……ええと、なんでだ?」


 一応、理由を聞いておく。


「さっきのキスは恋人になる前でしたから。もう一度しておきたくてですね」


 理由になってない。でも、そう言われてしまうと、俺だってそりゃしたいわけで。


「じゃ、じゃあ、するな」


 こういう時に、流れるようにできればいいのだが、つい確認してしまう。


「は、はい。お願いします」


 目を閉じて、少し緊張した様子の穂乃果。今度は、俺の意思でするのだと思うと無性に緊張してくる。顎に手を当てて、上を向かせて、ゆっくりと唇を近づける。


「んぅ……」


 そして、唇を軽く押し付けて、ゆっくりとキスをしたのだった。


「なんか、恋人になったんだーって実感します」


 うっとりとした表情でつぶやく様子は艶めかしい。


「俺はさっきの告白で実感したけどな」


 もちろん、キスも良かったけど。


「私は、なんか、触れ合わないと駄目みたいです」


 その言葉にドキリとしてしまう。


「触れ合うって……」

「だから、明日から色々要求しちゃうと思いますけど……よろしくお願いします」


 そう言って、丁寧にお辞儀をされたのだった。


◇◇◇◇


 そして、翌朝。


「んー、いい天気ですね」


 爽やかな笑顔で、伸びをする穂乃果。


「今日から、彼氏彼女か」


 なんとなく、言ってみる。


「言っておきますけど、私、独占欲強いですよ?」

「別に、独占欲ならいくら強くても。でも、正直、俺も強いと思うぞ」

「先輩はむしろ無さそうで心配ですけど」

「休み時間、お前が男友達と話してる様子想像して、嫉妬してたくらいだし」

「それはいいことを聞きました」

「あ、言っとくけど、それで男友達と距離取れとか言わないからな」

「言ってくれてもいいのに……」

「お前だって友達付き合いあるだろ」


 さすがに、そこまで束縛はしたくない。


「じゃあ、代わりに、クラスで公言しちゃいません?」

「それは色々恥ずかしいんだが……」

「お互い変に嫉妬しなくて済むと思うんですよ」

「それもそうか。じゃあ、それで」


 付き合い始めだというのに、なんとも重い話をしている俺たちだが、そんな風に重い愛情を向けられている事が嫌じゃない。


「お前のところに下宿するの決めて正解だったよ」

「私も、ですよ」


 そう言い合って、学校への道を歩く俺たち。


「あ、そういえば。昨日のデートのお誘いですけど、今日行きません?」

「お、いいな。行こうぜ」

「それで、ですね。実は、カップル限定のスイーツ店なんですが」

「お前、そんなスイーツ好きだったっけ?」

「別にスイーツはどうでもいいんですが、カップル限定ってとこが」


 何を想像しているのやら顔を赤くしているが、恥ずかしい事でもやらされるんだろうか。


「ま、いいか。行こうぜ」

「はい!」


 少し関係が変わった俺たちは、恋人として新しい1歩を踏み出したのだった。


✰✰✰✰あとがき✰✰✰✰


 というわけで、「考えさせてください!~下宿先の娘さんに恋した結果~」はこれにて終わりとなります。今までの短編の中では一番長い代物ですが、何か一つでも心に残ったものがあれば幸いです。


 感想などあればコメントいただければと思います。ではでは。

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考えさせてください!~下宿先の娘さんに恋した結果~ 久野真一 @kuno1234

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