少女の苦悩
小柄な体に肩まで伸びた茶色の髪。全身からわずかな怯えの気配を出しているものの、目の奥には力強い意志がある。
それがルルカが目の前にいる今回の護衛対象、ライラに抱いた感覚だった。
金髪の男をとっ捕まえた後になぜか話があると言われ二人っきりでこの部屋に残って数分になるが、未だに一言も喋りかけてこない。
「えーっと、話がないなら私はもう行くけど…」
「ま、待ってください!」
慌てた声でルルカを呼び止める。
「あなたに聞きたい事と、あと聞いてほしい事があるんです」
「なに?」
「なんで私を救けてくれたんですか?」
「いや、なんでって…これが今の私の仕事だし」
「あの、そうじゃなくて、なんでこの依頼を受けてくれたんですか?」
心底わからない。今彼女の顔に浮かんでいるのはそういった類の感情だった。
「他に依頼を出した人たちはみんな断りました。当たり前だと思います。他の貴族たちに嫌われている私たちを助ければ今後この国で生きづらくなりますから。でもあなた達は…」
「なにが言いたいのかわかんないけど」
ライラの話を遮りルルカは淡々と告げた。
「あんた達は困ってるんでしょ?命を狙われてるんでしょ?なのに救けてくれる人がいないんでしょ?だったら私とレントがやってやるわ。理由なんてないわよ。ほっといたら殺されちゃうやつがいるのにそのまんまほっとけるわけないじゃない」
ルルカにとっては当たり前のことだった。目の前で困っている人がいたら助ける。そこに特別な理由はない。
「でもっ…」
「おーいルルカ。ちょっと来てくれ」
扉の外でレントが呼びかける。
「呼ばれたみたいだから行くわ。あとの聞いて欲しい話とやらは後で聞いたげるから。じゃあね」
そう言ってルルカは部屋を出た。
「理由なんてない…そんなわけないっ…」
部屋の中でライラは一人唇を噛んだ。
L&R相談所〜脳筋少女と飼い主の俺 @danukifuru
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