俺は察しの悪い彼女を照れさせたい。  私はぐいぐい来る彼に照れ隠しをしている。

にわとり

第0話 始まりの始まり

「大好きだよ」




俺――坂柳 廣太郎こうたろうは、隣を歩く一人の女子に向かってそう言った。


きっと、いや、必ず普通の女子ならば少しくらい照れるだろう。が、それはあくまで普通の話だ。彼女は普通ではない。なにが普通ではないかというと―――




「わかる~!ここの店のたこ焼きおいしいよね~、このまえ10人前一気に食べっちゃった。アハハ」




いや、突っ込みたいところがありすぎるが、よくわかっただろう。そう、彼女――三上 鈴すずは、食いしん坊だ――じゃなくて、察しが悪すぎるのだ。


今の状況で、俺がたこ焼きの話をしていると思ったのは、きっとこの世の中に鈴ただ一人だろう。あり得るのだろうか、鈴の目をしっかりと見て気持ちを込めていった言葉が、すべてたこ焼きに向けられていると思うことなど。どんなけ、たこ焼きが好きだと思われたのだろう。


くそっ!


今日こそ、鈴を照れさせたかったのに。


三上 鈴さん。彼女は、くそ美人である。そして、俺がぐいぐい行っても何も察してくれない、あほな女の子ある。






―――






「大好きだよ」




私――三上 鈴すずは、隣を一緒に歩いてる一人の男の子にそう言われた。


きっと、いや、必ず普通の女子ならばの少しくらい照れるだろう。が、それは普通の女子の話で、私は照れない。いや、内心はものすごく照れている。




「わかる~!ここの店のたこ焼きおいしいよね~、このまえ10人前一気に食べちゃった。アハハ」




でも、私は照れ隠しをする。それは、彼――坂柳 廣太郎君が悲しそうにこっちを眺めるのが可愛くて、可愛くて、たまんないから!…じゃなくて、って言っても信じてもらえないか。そう、私は廣太郎にぐいぐ来てもらうのが好きで、でも私が照れないことに落ち込んでる廣太郎が可愛いから。照れを隠してるの!


でも、今のは急すぎて、照れが出そうだったけど危ない、危ない。イケメンに急に大好きだよって、夢みたい!


でも、一回照れちゃうとゲームオーバーだもんね。我慢、我慢!


坂柳 廣太郎君。彼は、イケメンである。そして、ぐいぐい来てくれて、でも私が照れないことに落ち込んで泣きそうになってるかわかっこいい男の子だ。




でも、そんな鈴さんが。




でも、そんな廣太郎君が。




「「大好きだ」」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺は察しの悪い彼女を照れさせたい。  私はぐいぐい来る彼に照れ隠しをしている。 にわとり @1997313

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ