第330話 笑顔の意味

真奈美の格好は制服のまま……もしかして、学校からここまで直行してきたのか?


「……な、なんでいきなり来たんだよ」


 俺はなんとか真奈美にそう言った。真奈美は何も言わずに俺のことを見ている。


「もしかして、私のこと、疑っている?」


 と、真奈美は急にそんなことを言ってきた。俺は思わず目を丸くしてしまう。


 しばらく真奈美は無表情で俺のことを見ていた。しかし……しばらくすると、急になぜか笑いだした。


「……へ? な、なんで笑っているんだ?」


「あはは……。ううん。いや、だって……たぶん、私が中原君と浮気しているかと、思っているんでしょ?」


 俺はますます目を丸くしてしまう。真奈美はむしろ、その様子を見て、喜んでいるようだった。


「なっ……! なんだよ! どういうことなんだよ!?」


 思わず俺は怒鳴ってしまった。しかし、真奈美は嬉しそうに微笑んでいるだけである。


「どういうこと? さぁ? フフッ。そっか。湊君は不安になっちゃんだね。でも……不安になってからって、あんな子を家の中に招き入れるのは良くないよ」


「だ、だから……どういうことなんだよ……。お、俺は勘違いしているだけなのか?」


 俺がそう言っても真奈美は不敵に微笑んでいるだけである。ますます意味がわからない。


「う~ん……ホントは教えてあげてもいいけど、外川さんを家に入れたこと、許せないから、教えてあげない」


 そう言うと、真奈美はなぜか安心したような顔で、そのまま玄関の扉を開ける。


「お、おい! 帰っちゃうのかよ!」


「うん。だって、確認できたから。私のことが好きだから、私が浮気してないか不安になっちゃったんでしょ?」


「なっ……そ、それは……!」


 俺は何も言い返せなかった。しかし、真奈美の方はニッコリと微笑んでいる。


「大丈夫。私も湊君のこと、大好きだから」


 そう言って、そのまま真奈美は扉を開けて、出ていってしまった。


 俺は突然の展開に対応することもできず、そのまま玄関で立ち尽くすしかなかったのであった。

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前の席の前野さんと後ろの席の後田くん 味噌わさび @NNMM

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