君を消すために

綿麻きぬ

思い出

 これは君に捧げる鎮魂歌だ。


 君は消えた。確かに消えたけど、消えてない。だって、僕の中で君との思い出は消えてないから。


 君との思い出は一杯ある。あったはずだが、それはもう靄がかかってきた。靄を取り払うように君との思い出を探しているが一向に見つからない。どこに僕は思い出を置いていってしまったのだろうか。


 それでも僕が思い出を消さなければ、君は消えない。だけど、もしかしたら君は僕の中でだけ消えてないのかもしれない。他の人の中からは君は消えてしまったかい。


 君は様々な問題を背負って、淘汰された。それはまるで磔にされたイエス・キリストみたいだと言う人々もいる。君はそんな人たちの中では消えている。


 真実の君を知っているのは僕だけだ。そんな君がいたことを僕は証明できない。


 なぜ、証明できないか。僕だけの中でしか存在してないからだ。


 なぜ、君に鎮魂歌を捧げているのか。それは君にまだ僕だけが囚われ続けているからだ。


 僕は、君の何を知っている。多分、だけど何も知らない。


 僕は君に何を思いたかったのだろうか。もう何も思わないことにするよ。君を完全に消すために。


 君を消したらきっと世界は平和になるんだろ。

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君を消すために 綿麻きぬ @wataasa_kinu

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