第17話 運動4

「ぱぱ、私も剣振りたい!」


先日、父ユリウスの話を聞いて魔獣は人よりも強大で命の危機は常にあると考えた私はリスクマネジメントで剣の修練を願い出た。


せっかくだから、父ユリウスとの時間を作ると言う意図もある。


「わかった。じゃあどんな武器が合っているか確認しようか」


武器には適性があるらしい。とは言え、体格や感覚は人それぞれ違うので適合するものを練習するのだ。


私は武器庫へ連れて行かれ、武器の選別をする。


「うー。おもいぃ」


鉄製の武器の重量は5キロ以上。得物も長いのでテコの原理で更に重く感じる。


魔法でいいか。


私は剣を2本自身の周りに浮かべて、父ユリウスに振り向いた。


「出来た!」


「えっ、あぁうん?魔法かな?」


「うん、近くに敵が来て魔法使ったら巻き添えになっちゃうでしょ?私より力強いから力負けしないようにしないと」


「そ、そっか。まあ、パパは双剣も使ってたからそれでいいかな、うん」


武器を選んだので訓練場へと向かう。武器庫と訓練所は10分程離れており、それだけでこの館の大きさがある程度測れる。


訓練場へ到着すると、兵士たちが剣を振っていた。200名程いる兵士たちの年齢は若い。先の討伐での被害が回復していないのだろう。


父ユリウスが教官に一言告げると、兵士たちが端へと追いやられる。

どうやら、兵士よりも私が優先されたらしく、十分な距離を保ちながらも一斉に素振りが出来る状態から彼らは密集した。


「皆んなに見て貰うの?」


「うーん。僕が剣を振るうのは魔王級討伐以来だから兵士達の見本になるかなって思ってね」


「わかった。じゃあよろしくお願いします!」


私は一礼して浮いている剣を父ユリウスに向けた。


「うん、よろしくお願いします。先ずはイアがどれだけ出来るか調べたいから思い通りに斬りかかってきて。僕は受けるか避けるから」


「はーい」


私は1本の剣を高速で放ちながらもう一本の剣を袈裟斬りになるように操作した。自身の立ち位置は変えずとも剣だけが父ユリウスを襲う。


「へっ?!あぶっ」


放った剣は避けられて袈裟斬りした剣は受けた。が、受けられた剣を鍔迫り合いへと持って行きながら放った剣を反転させて背後から突き刺すようにまた放つ。


避けられた。


「ふーん。じゃあ私も参戦する!」


端に寄った兵士の剣を魔法で引き寄せて両手に剣を持ち、ユリウスに走って近づき剣戟を見舞う。


踊るように、舞うように。自分で剣を持っているだけで後は魔法任せで剣を動かしているので、筋肉も使わないし重くない。


持った剣で独楽のように高速で回って、両方の脇腹を抉るように突き刺して袈裟斬りに。放った2本の剣が跳ね返る弾丸のように父ユリウスを襲った。


背後から上下左右から剣を見舞ってもかすり傷だけでマトモに攻撃が当たらない。


「イアっ。まって!」


「はーい」


父ユリウスから待ったが掛かったので剣戟を止めて距離を置く。


「はあっ、はあっ、疲れないの?」


「うん。ずっと出来るよ?」


「そっかー。じゃあ、なんで当たらなかったか分かるかな?」


「うーん。パパが避けるから、あっそっか!避けられないようにすれば良いんだ!」


やっぱり、範囲攻撃。範囲攻撃は全てを解決する。


「イア、ちょっと待とうか」


「はーい」


父ユリウスは暫く考え込み唸る。


「うー。じゃあ手に持ってる2本の剣だけでやってみよっか」


「うんっ!じゃあ、行きます!」


息をさせないように連続攻撃を見舞う。が、先ほど避けられたばかりなので工夫してみた。


片方の剣戟をわざと受けさせてもう片方で脇腹を狙い突き、それを回避しようと動いた瞬間に受けさせた剣を手放して手首を掴み、小手返しで関節を決める。


「っつ!?」


返された。


掴んだ手首を起点に父ユリウスの持つ剣の柄を蹴り上げて、上方向に体を仰け反らさせて空いた腹に手に持つ剣を突き出した。


ガキィンッ!


「やっと一本っ!」


軽鎧の腹部に傷をつけられて、父ユリウスはびっくりしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

TS令嬢は無関心 煙道 紫 @endouyukari

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る