&α それから.

「おっ。おはようございます。今日は起きるのが早いですね」


「あら。おかえりなさい」


「次の依頼のものは、完成しましたか?」


「ばっちりです」


「徹夜にならなくて、よかったですね」


「今日は記念日なので、ごはんを作ってました」


「おっ。お?」


「パンケーキです」


「パンケーキかあ」


「あっ不満な顔」


「牛丼食べたくないですか?」


「牛丼。食べたいですね」


「じゃあ、パンケーキ作り終わったらキッチンを貸してください」


「はい」


「なんの記念日なんですか?」


「私とあなたが。出会った記念日」


「しにたくなった記念日じゃないですか」


「あはは。そうかも。はい。パンケーキできました」


「よし。やるか」


「今のあなた。たのしそう」


「そうですね。少なくとも、牛丼を食べたいと思うぐらいの、心は、あります」


「よいことです。とてもよい」


「これからも生きていくんです。ふたりで」


「はい」


「そのためには、おいしいごはんは不可欠ですから」


「これでお菓子も作ってくれたら最高なのに」


「お茶とおせんべい派です」


「ぐぬぬ」


「あれ。砂糖。どこですか?」


「どこでしょう?」


「なんでもかんでも胸に挟んでますね」


「つい、癖で。はい。お砂糖です」


「人肌のぬくもりを感じる」


「大きな胸も、私の武器ですから。えいっ」


「私を挟んでどうするんですか」


「たべる」


「しんじゃうじゃないですか」


「牛丼が先かな?」


「たべるのは確定なんだ」


「生きるためには、たべなきゃ」


「それが私の置かれた状況ですか?」


「はい。あなたはわたしにたべられる運命。はい。パンケーキ食べさせてあげる」


「おいしい」


「でしょ。甘さひかえめ」


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声なき心、まだ夢の途中 春嵐 @aiot3110

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