その鏡、全てを写す。

さぃとぅ

第1話 古い骨董品屋で

 俺こと白鳥 楓しらとり かえでは名前こそ女みたいだがれっき賭した男でる、女装趣味もなければ男の娘でもない、何なら身長175㎝現在も成長中だ、自分で言うのもなんだが割と鍛えているほうだと思う。

 そんな俺が住む白鳥家は代々古い骨董品屋を営んでいる、営んでいるといっても父、母、祖父、俺の四人を賄えるほどの売り上げがないので父は骨董品屋を継がずに会社勤めをしている。その父だが、かなりいい会社に就職していることもあり白鳥家は何の不自由のない生活を送っていた。

 しかし、最近うちの骨董品屋に奇妙な品が持ち込まれた、それは大きな鏡だった。大きな鏡というと語弊を招くかもしれない、なぜならそれは俺の鏡の基準が手鏡程度の大きさだからだ、あまりこういうのに詳しくない俺は母に尋ねてみたのだがどうやら「姿見」という種類らしい、持ち込んできたのは五十代くらいの男性で骨董品集めが趣味って感じの人だった、コレクションの一部を売りに来たのかと思っていたが査定をした祖父は査定額を1000円と出した、(やすくね?)とも思ったのだが男性は何も言わず査定額をもらってそそくさと帰って行ってしまった。

「爺さん、その鏡見た目は結構高そうなのにそんな安く買っていいのか?」俺は気になって祖父に直接聞いてみた、「確かに鏡自体はかなり良くできておるのじゃが、これを見てごらん」そう言って祖父は鏡の裏面をこっちに向けた、するとそこには一面にお寺でよく見る「いかにも」って感じのお札がびっしりと張られていた、背筋に寒気を覚えた。「なっ、なんなんだよ、、、これっ?!」純粋な疑問だった、これでは骨董品ではなく呪われた鏡だ、「さっきのお客曰く、この鏡を知人に紹介したら知人んがこの鏡に文字が浮かび上がるというんじゃ、「なんて書いてあるんだ?」とお客が聞いたところ「社長秘書と不倫している」と書いてあったらしい、それが事実だったらしくな、バレたくはないがこの鏡のデザインが気に入ってたらしく、お祓いなどいろいろ試したのだが、社内のパーティーを家で開いたときにおんなじ文字が浮かんだらしく、会社では人事異動、妻とは離婚し、流石に手放すことに決めたそうじゃ」割とがっつり呪われてる系の物で動揺が隠せないのだが?

「チリんっ、チリんっ」入口の鈴が鳴るだれか入ってきた合図だ、「ごめんくださーい!、、、。わぁ、きれいな姿見ぃ!」入店早々例の物に反応したのは、隣に住む幼馴染、天空時 琴音てんくうじ ことねだ、同じ高校に通う俺の一個上の先輩だ、

「今日はどうしたんだよコトネェ、」たいていこいつが店に来るときは、暇なときか、宿題が終わらなくて本格的に焦りだした時くらいだ。「いやぁー、べつにぃー、暇だから来てみたの」ほらね?「そんなことよりこの鏡めちゃくちゃおしゃれじゃん!私ちょうど姿見が欲しかったのよねぇ」ふと思ったのだが、こいつにもさっきのお客さんみたいに知られたくない秘密ってあるのだろうか?そう思うと気になりすぎて夜しか寝れそうにないな、、、「おいコトネェ!背中になんかついてるぞ?」「え?どこどこ?」「鏡で見てみろよ、手で届く位置だからさ」「えぇ~?」もちろんコトネェの背中には何もついてなんかいない、ただ単にコトネェを鏡の前に誘導するための嘘だ、「え~?どこよぉ~?」そう言いながら鏡に背を向けるコトネェ、しばらくすると鏡がうっすらと曇りだした、、、「んん~?鏡なんか曇ってない?」そんなこともつかの間、鏡に文字が浮かび上がってきたではないか!?するとコトネェがその文字をおもむろに読み始めた、「天空時 琴音は処女だが、妄想の中ではクラスの男子や後輩を食い漁る妄想ビッチである」こりゃまたとんでもない秘密がバレましたね、、、。

 しかし、にわかに信じられない俺はコトネェの顔をのぞいてみた、するとどうだろう長い付き合いにはなるが今まで見たことないくらいの赤面ではないか!?「(あっ!これマジのやつだ、、、)」しばらく固まっていたコトネェがようやく口を開いた、「私ィィ、用事思い出したから帰るね、、、」震える声でそう言うとコトネェはおぼつかない足取りで店を出ていった。

「この鏡、、、マジのヤツだ、、、」

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その鏡、全てを写す。 さぃとぅ @seiseiyayaya1

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