ビキニアーマー。

 そうあのビキニアーマーである。

 鎧と銘打ってはいるが、きわどい女性用水着と酷似した形状で、体の大部分がさらけ出されているあのビキニアーマーだ。

 かつてそれぞれの名家に分け与えられた全77つの神器。

 我がディヴィス家の初代当主であるご先祖様に与えられた神器というのが、その『エッチなビキニアーマー』だった。

 以来ディヴィス家は代々そのビキニアーマーを家宝として大事に管理、利用している。

 ビキニアーマーとしては他の追随を許さないぐらい強力らしい。

 なぜディヴィス家に与えられたものがビキニアーマーだったのかと言えば、それはご先祖様が中心メンバー唯一の女性だったかららしく、割とそれは誇らしいものではあったが、同時にとんでもない呪いだった。

 しかし奇跡も起こる。

 以降のディヴィス家は、まるでそのビキニアーマーに合わせるかのように、後継ぎとなる第一子はすべて女の子が生まれていた。

 あ、父上は偉そうだが家長ではない。母上が家長であり父上は婿である。立派な騎士ということで婿として迎えられた。

 そして……、

「なんだと! クリスが、犯人!?」

 怒鳴る声は父上だ。この家の婿の。

 犯人が私だという事実が、父上は今、もっとも大事らしい。

「本当なのか!? なぜ盗んだ!」

 シャーリーの推理を露ほども疑っていない。

「盗まなくても、いずれお前が継ぐものだぞ! ……はっ! まさか、お前……」

「理解いただけましたか父上。そうですクリスさんは、そもそも継ぐのが嫌だったのです。この家から家宝がなくなればよいと考えていたのです」

「やっぱり、嫌だったのか……。ビキニアーマーが……」

 今にも倒れそうな顔色の父上は、しぼりだすような声で言った。

「男だから……」

 当たり前だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

神さらいの悪魔 @kuripuupi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ