意外と気付かない、勇者に必要な5つの法則! ~パーティに〇〇は入れるな!~

もくはずし

意外と気付かない、勇者に必要な5つの法則! ~パーティに〇〇は入れるな!~



前書き


 本記事は筆者とつながりのある酒場にて無料配布されております。恐らくこれを目にする皆さまの多くは今現在、魔物や盗賊と戦い、町を守り、人類の最前線を切り開く勇者と呼ばれるジョブについているかと思います。また、勇者を目指して本記事を見ている方もいらっしゃるかもしれません。


 意外とこの世界の勇者人口は多く、ある調査結果ではその数延べ1000人を超えると言われております。これは町1つから、5年に一度は新しい勇者が出ている計算になります。

 さて、これだけ多くの勇者が存在する中、誰もが一流の勇者であるとはお世辞にも言えません。筆者は数多く、張り出されるクエストをただひたすら消化するだけの、惰性で勇者を行っている者を見てきました。


 筆者は自身の勇者経験と供に、多くの勇者に取材を重ねた結果から、成功を掴み取る勇者が共通して持つ“5つの法則”を導き出しました。どの地域にもコミットできる、有用なソリューションです。戦闘にかけては腕っぷしの者が多いのですが、勇者とはパーティを管理する経営者です。その視点に欠けていれば、いくら自分だけが強くとも高みを目指すことが出来ません。


 本記事を通して、より一層勇者業に高い意識をもって臨み、人類の繁栄とご自身の栄光を掴み取る勇者が現れてくだされば幸いです。



5つの法則




 第1法則:商人(あるいはその息子)を利用しろ!

 

 まず貴方が勇者として冒険に、クエストに繰り出す際、どのような装備で挑みますか?

 最もコストパフォーマンスに長けた、支給の鉄鎧と両手剣? この選択は非常に非効率的と言わざるを得ません。支給の装備はどれも安価で、少し強いコボルト相手にすら破られる代物です。加えて、少し経験のあるゴブリンであれば貴方達が担ぐ装備の相手と散々戦っており、経験値があるでしょう。どうです? 支給装備で冒険に出る愚かさが分かっていただけたでしょうか?


 それはそうと、自らで装備を調達するにはいくつかの問題が発生します。しかし、商人と関りがあれば一気にその問題は解決します! 御存じかとは思いますが、武器屋は冒険者ギルドではなく、商工会ギルドの一員です。ツテが無い勇者は往々にして武器屋に一般価格にてぼったくられますが、商工会ギルドに入っている商人のどなたかと繋がりがあれば、顔を利いてもらうだけで平均20%程、割安で商品を購入することが出来ます。 


 加えて、その商人とアライアンスの締結を提案してみましょう! 貴方に資金提供をする代わりに、クエスト報酬の5%を提携料として支払う内容です。勇者とのつながりは町中に自慢できる、いわば勲章的価値があります。信頼できる冒険者とこの内容の契約を拒否する商人は、商才に欠けています。


 しかしこの契約には信用が第一です。もしあなたが駆け出しの勇者で、なおかつ王令民事項目に契約関係の記載が無い場合、口約束で見知らぬ商人とこのアライアンスを組むことは非常に難しいです。勇者になる以前から、コミットメントを得る為に努力を惜しんではいけません。




 第2法則:パーティに炎系魔法使いを選ぶな!


 5つの法則の中で、最も知られていない法則です。経験の浅い勇者の方は、首をかしげたことでしょう。気持ちはわかります。炎系魔法を得意とするソーサラーは、見習い勇者や底辺勇者に重宝されます。面制圧力が高く、魔力が比較的低くとも文字通り「火力」が高いのが炎系魔法の特徴ですから、魅力に思うのも無理はありません。


 しかし、炎系の魔法ほど高レベルな戦闘経験・魔力が必要とされる魔法は他にありません。低練度のパーティに入れてはいけないのです。実戦をイメージしてください。山道で、ゴブリンの群れが斜面を下って襲ってきます。よくある実践例ですが、このシチュエーションの場合、炎系魔法使いの制圧力に頼るのは得策とは言えません。


 仮に炎系範囲攻撃魔法の代表格【イグノ・フレリア】を放った場合ですが、攻撃を放った後の状況は最悪です。燃え残る炎や大量の煙により、敵の位置がさっぱり分からなくなり、自身の行動範囲も狭まることでしょう。それくらいならまだよい方で、炎のコントロールが利かず、山火事になってしまった場合はより一帯に甚大な被害を及ぼす可能性すらあります。これらのことを踏まえ、今一度炎系魔法の使いどころを実戦のシチュエーションをイメージしながら考えてみてください。意外と使いどころに困ることでしょう?


 ではなぜ、高練度のパーティには炎系勇者を入れても良いのでしょうか? 練度が高ければ、ソーサラーは自身の炎をより精密にコントロールすることができ、またそれによる副産物(意図せず燃やしてしまう浮遊物や煙等)のコントロールも可能です。また、パーティの練度が高ければ高いほど、遮られる視覚や燃え残った炎に左右されない戦闘スキルが期待されます。


 しかし、傾向から言っても高練度のパーティにすら炎系魔法を得意とするソーサラーがいない事のほうが多いです(筆者調べ)。やはり危険度が低く、かつ突破力・応用力の高い水系や土系の魔法をメインとするソーサラーを選択するのが無難でしょう。




 第3法則:ビーストマスターを僧侶よりも優先しろ!


 回復職の代表、僧侶は皆さんも是非ともパーティに入れたいジョブの一つだと思います。一方で、ビーストマスターはかなり不人気な職業で、連れている動物の管理が大変、臭いに難あり、と様々な理由から嫌われがちです。


 しかし、優秀なパーティ程ビーストマスターのプライオリティが高いのです。当たり前ですが、冒険中は街の警備クエストでない限り、殆どの時間を野外で過ごすこととなります。パーティのトラブルで魔物との戦闘以上に危険度が高いのが、野生動物との接触です。大抵の場合は魔物に比べ戦闘力は低く、知性も低いので軽視されがちですが、移動の妨げになったり、睡眠中にこっそり食糧を持っていかれたり、魔物との戦闘中乱入されたりと、かなり厄介な存在であることは、ある程度冒険に出ている勇者諸君であれば御存じでしょう。


 ビーストマスターは彼らの習性を熟知し対策が可能で、また使役する獣にそれらを追い払わせることも可能です。戦闘で受けた傷を癒すよりも、万全な状態で戦闘にあたり、受けるダメージを軽減する効果が大きいのです。

 

 また、優秀なビーストマスターはその地方のゴブリン語やオーク語等を習得しています。交渉により無駄な戦闘を避けることが、より一層貴方のパーティを成功に導くことでしょう。



 

 第4法則:クエストを受注するな!


 正直、この項目を記載しなければ各冒険者ギルドでの配布や、クエストボードへの掲載が可能だったのです(笑) 非常に重要な項目であるため、今回は涙を呑むこととします。


 クエストとは、仕事を委託する依頼主から冒険者ギルドが受注し、勇者やその他冒険者が実際の仕事を請け負うことによって成立する業務形態です。カスタマーは大きなところで国王から、小さなところでは小金持ちの商人や小さな村の村長などです。勇者諸君はこの場合、一次受けになりますので、当然元受けから入る金額から何割か引かれた額が報酬金として掲示されることとなります。


 エビデンスとして、名前は出せませんが確かな情報筋より入手した、町ごとの冒険者ギルドに元受けからの受注料の何割が報酬金として掲示されているかを見ていきましょう。


 A町 報奨金が元受けより預かる金額の80%

 B町 報奨金のランクにより90~60%

 C町 受注手数料無し。ただし、冒険者ギルドへ1日当たり約24.8Gを支払わなければギルドから追放

 

 お判りでしょうか? 今まで受けてきたクエストの報酬金を思い浮かべてみてください。意外と中抜きされている額は高いのです。貴方がこのクエスト受注手数料についてバカバカしいと思う計算高い勇者であれば、今からクエストボードを見て、発注の多い受注主のところへ営業をかけてください。


 勿論、自身のレベルに応じたクエストを出すカスタマーを選ぶ必要があります。貴方が駆け出しであれば、商人や村長に自身の冒険ポートフォリオを持って訪問し、護衛任務を直接受けられるよう交渉しましょう。ドラゴンやトロール・ロードなどの討伐経験のある勇者であれば、小国の王様に謁見アポイントメントを取ってください。


 元受けにとっても、本来よりも安くクエストが受注できるチャンスとなります。長く関係を保つためにも、冒険者ギルドに発注するよりも安い金額で請け負い、win-winの関係性を構築してください。




 第5法則:常に自分の実力よりも高い仕事にチャレンジしろ!

 

 文字通りの意味です。冒険者というのは兎に角、死と隣り合わせの仕事です。自身の実力を見誤り、危険なエリアに入り込んでしまったり、逃げるべき相手に立ち向かってしまえば当然、死んでしまいます。


 ですがそのことを必要以上に恐れ、何事にも挑戦しないままでは、それこそ勇者として死んでいるも同然なのです。己を知り、敵を知れば、自ずと自分の限界値が見えてきます。しかしそこで満足せず、常に自分の限界以上の敵と渡り合うことによって、他パーティよりも上質な経験を積むことが出来るのです。


 また大きな壁を突破するにあたり、自ずとクリエイティビティを発揮する必要に迫られます。人間というのはピンチになればなるほど脳が活性化されるので、貴方の潜在能力を引き出すチャンスとなるでしょう!


 


 あとがき

 

 いかがでしたか?

 これらの法則が皆さんの冒険の助けになれば幸いです。

 参考になったと思う方は、是非この記事を知り合いの冒険者に拡散してください。今後もより良い世界を作るため、こうした記事を定期的に発信していこうと思いますので、応援の程宜しくお願い致します!



 筆者プロフィール

 イシーキ・タ・カイン

 元勇者。シルベヘルタにてのドラゴン討伐を筆頭に、数々の魔物を討伐した勇者。36歳にて引退。現在はサルガ王国を主軸に勇者コンサルタントを行う。著書に『商人目線の勇者学』『仲良しパーティ・仲違いパーティ』等

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意外と気付かない、勇者に必要な5つの法則! ~パーティに〇〇は入れるな!~ もくはずし @mokuhazushi

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