思い出す私(140字小説)
塩塩塩
思い出す私
気が付くと壺の中だった。
傍らの男は床屋だ。
思い出した。私は散髪に来ていたのだ。
床屋は神経質そうに鋏を動かしている。
思い出した。私は覆面調査でこの店の星の数を査定に来たのだ。
床屋は私の襟足を整えている。
思い出した。今日この国は開戦したのだ。
私は壺の謎など忘れてしまっていた。
思い出す私(140字小説) 塩塩塩 @s-d-i-t
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