雲の海

雨世界

1 私はこれからも生きていこうと思った。

 雲の海


 登場人物


 漣明日花 中学三年生


 小森桜 中学三年生


 森園昇 中学三年生


 プロローグ


 ……花が舞い、空に昇る。


 そんな風景を見て、私は思う。

 私は、幸せだったのだ。


 本編


 私はこれからも生きていこうと思った。


「ねえ、明日花。明日花は誰か好きな人とかいるの?」

 にっこりと笑って、春の日差しの中で小森桜はそう言った。

「別にいないよ」 

 にっこりと笑って、桜の顔をじっと見ながら明日花は言った。


「そうなんだ。いないんだ。へー」と興味深そうな顔をして、桜はじっと明日花の顔を覗き込んだ。(明日花は少しだけ、その顔を赤くさせた)

「それ、本当?」

 にっこりと笑って、桜は言う。

「もちろん、本当だよ。嘘を言っても意味ないじゃん」明日花は言う。


「まあ、そうだね」桜は言う。

 二人は今、中学校の下校途中にある桜の咲いている神社の隣の道を並んで一緒に歩いている。

 季節は春。

 天気は晴れ。

 吹いている風は、とても優しい風。

 青色の空の中には、とてもゆっくりとした速度で、桜吹雪が舞っている。


「綺麗だね」

 思わず立ち止まって、桜が言う。

「……うん。本当に綺麗」

 同じように道の端っこに立ち止まって、明日花は言う。


 桜の目はじっと空に舞う、(自分と同じ名前をした)桜の花びらを見つめている。

 でも、明日花の目は、そんな桜吹雪の舞う風景を見ていない。

 明日花はじっと、そんな桜吹雪の舞う風景を見ている、桜の横顔をずっと見つめていた。

 それは、とても綺麗な形をした(明日花の大好きな)横顔だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

雲の海 雨世界 @amesekai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ