第26話 ママの涙

こんなママは初めて見た。目から大粒の涙がこぼれてる。


ねえママ、あのね。


ママ、ママ、ぼくわかったよ。

ぼくがいなくなったら、もう一回おんなじぼくは作れない。

永遠に消えちゃうってよくママ言ってたよね。


ぼくわかったんだよ。

ぼくはこの世界に一人だけ。

だから、ぼくがいなくなったらこの世界にひとりだけのぼくが消えちゃうんだ。


ねえママ、あのね。


ぼくママにお手紙書いたんだ。


画用紙を半分に折って

「ママへ」って書いてある。


その下に、

ママの好きなさくら色の花びらの絵を描いた。


『ママへ。


ママのことだいすきだよ。


パパよりもっとだいすきだよ。


これからおてつだいもい(っ)ぱい、い(っ)ぱいするからね。


いつもごはんつく(っ)てくれてありがとう♡』


カイより



病院のベッドから、窓の外にお兄ちゃんの顔がふうわり浮かんでるのが見えた。


お兄ちゃんは、手を振ってニコニコしながら上の方へ上がって行った。


今ごろ、天国でおじいちゃんと遊んでるかな。

いままでありがとう。お兄ちゃん。

あの時も、トラックとぼくの間に入ってぼくを何とか助けようとしてくれたんだね。



ぼくが寝てるベッドの横の椅子にちょこんと座ってるママ。

顔は、くしゃくしゃ。

いつも気にしてるお化粧はどっかにいっちゃってる。


そして、


目からは大粒の涙があふれてた。

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ねえママあのね・・♡ 橘 凛 @takuan2010

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