一匹の不思議な蝶々

雨世界

1 愛を探すために、人生はある。……私はそう、確信している。

 一匹の不思議な蝶々


 登場人物


 花の園かすみ 十五歳


 木屋敷蝶々 十四歳


 プロローグ


 不思議な蝶々を捕まえる。


 愛を探すために、人生はある。……私はそう、確信している。


 本編


 光る蝶々を追いかける夢


 ある日、私は不思議な光る蝶々のいる夢を見た。それはこれから私に起こる奇跡の始まりを告げるできごとだった。


 君への贈り物


 君の見つけた、宝物。

 私が見つけた、大切な愛。

 ……ありがとう、お父さん。……ありがとう、……お母さん。


 嬉しいこと。それは、(君に)あなたに会えること。


 ある日、花の園かすみは光る蝶々のいる、とても不思議な夢を見た。真っ暗闇の世界の中でただ一つだけひらひらと空の中を舞いながら、輝き続けている、蝶々。その金色に光る不思議な蝶々は、なぜかとてもかすみの目を引いた。

 どうしても、その光から目を背けることができなかった。

 かすみはじっとその真っ暗闇の世界の中に立ち尽しながら、ずっと、その光る不思議な蝶々の姿だけをただ見つめ続けていた。

 するとしばらくして、その光る蝶々は闇の中をゆっくりと(まるでかすみのことをどこかに導いて行こうとするようにして)移動し始めた。

  かすみは、自然と目と足が動いて、その光る蝶々のことをゆっくりと歩き初めて、追いかけ始めた。

 ……この蝶々は私をどこかに連れて行こうとしている?

 そんなことをかすみは思った。


 もしそうなのだとしたら、この蝶々は私をどこに連れて行こうとしているのだろう? すごく楽しいところかな? ……それとも、今と同じでとても悲しくて辛いところなのかな?

 そんなことを歩きながらかすみは考えた。


 できるなら、すごく楽しいところがいいな、とそんなことを考えてかすみはくすっと小さく笑った。

 それからかすみは自分が笑っていることに気がついて、自分でもすごく驚いた。私、まだこんなに自然に笑うことができるんだと思った。

 ずっと泣いてばかりいたかすみは、笑いかたを忘れてしまっていた。


 光る蝶々はひらひらと美しく金色に輝きながら、真っ暗な闇の中を飛んで移動し続けた。


 花の園かすみは、そんな蝶々のことを、ただずっと、ひたすらに追いかけ続けていた。

 なんだかだんだんと、真夜中に一人で月明かりの下で(あんまりよく眠れないから)散歩をしているように思えてきて、かすみの心は楽しくなった。その気持ちは嘘ではない。その証拠にかすみはにっこりと自分でも気がつかないうちに、光る蝶々を見て、すごく楽しいところにいきたいと思った時と同じように、にっこりと自然に笑っていた。(その足取りも、まるで蝶々のように軽かった)

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