「えいっ」


「うわっ」


 後ろから、やさしい衝撃。


「もう、大丈夫ですか?」


「はい。ありがとうございます。別れは、済ませましたから」


「別れ?」


「はい。ずっと、この部屋のことを。夢に見ていたんです。でも、私ひとり、でした」


「なにか、勘違いしていませんか?」


「はい?」


「夢で見た相手は。誰ですか?」


「そこにある、写真のかたで」


「違います。違いますよ。思い出してください」


「え?」


「あなたを探すの、たいへんだったんですから。でも、あなたの作った建物で、わかりました。四角くて、大きくて、広くて、大きな窓のある部屋。ここと、同じ」


「あの」


「ずっと、会いたかったです。うれしい」


「その。ごめんなさい。ええと、わたし、その。女性のかたとは」


「私ですか?」


「あの。腰をこすりつけられても」


「わかりません?」


「うそ」


「わたし。両方持ってるんです」


「うそ。うそ」


「えっ」


「あの」


「うそ」


「私もです」


「え、なんでですか。わたし、胸が、ないのに。なんであなたのほうは、胸があるんですか。理不尽?」


「いや、それは私にも分からないです」


「まあ、いいです。どっちでも」


「やっと、会えました」


「はい。私も」


 やさしい光。部屋を満たし続けている。

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アーコロジック・ヘルマフロディトス 春嵐 @aiot3110

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