雪月花
幽美 有明
カメラの向こうに見える君
席替えの日、おまじないをした。
あの子の隣に座れるように。
外を眺めるあの子の横顔がとても綺麗で、それを隣で見ていたいから。
おまじないが叶ったのかあの子の隣に座ることが出来た。授業中、昼休み暇があればずつんと眺めていた。だから、すぐに声をかけられた。
「ずっと見られてると、集中出来ないんだけど」
「ごめんなさい」
「そんなに私が好きなの」
「外を見てるのが綺麗で、その」
「見てたって言うわけ」
「うん」
「こっちも迷惑なんだけど」
「じゃ、じゃあ。写真撮らせて、写真の方を見るようにするから。それなら迷惑じゃないでしょ」
「それで見るのを辞めるなら」
「ありがとう」
鞄からカメラを取って覗き込む。窓の外を見る横顔は変わらず綺麗で、それを写真に収めた。
放課後、コンクールに出す写真を撮るために外を歩いた。何枚も写真をとった。だけど、どの写真も色があるのに色がないように見えてしまう。
現実の景色は綺麗なのに、カメラで撮った景色は色あせてしまっていた。何をどうやってもそれは変わらなかった。
今まで撮ってきた写真を眺めた。席替えの日撮ったあの子の写真。その写真だけは色あせていなかった。
自分の席から窓を撮ってみた。あの時の変わらない構図と場所。違うのはあの子が居ないこと。
撮って、そして見比べてみた。あの子のいない写真はやっぱり色あせていた。
僕にとって、あの子がいる景色だけが色付いた世界に見えていた。
これはコンクールのため。そう自分に言い聞かせてあの子にお願いをすることにした。
「もう一度写真を撮らせて欲しい。コンクールに出す写真を撮りたいんだ」
「私が写っていないとダメなの?」
「うん。場所は君が決めていいから。お願いします」
「じゃあ、夜。ここに来て」
あの子に紙を渡された。場所の書いてある紙。
その日の夜、渡された紙の場所にいった。
降り積もった雪
輝いている満月
終焉近い竹の花
そして空を見上げるあの子
撮った写真は今までに無いくらい輝いていた。
雪月花 幽美 有明 @yuubiariake
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