星見のユメ

佐月今宵

星見のユメ

 真っ暗な空に、煌々と輝く星々。

 綺麗、素敵、と星空を眺める人々が次々に呟いた。

 かくいう僕も、この星空が好きだ。

 なんたってこの丘は、恋仲であった幼馴染と最後に来た場所なのだ。

 最後、というところで察せられるがそう、その幼馴染は二年前に交通事故で亡くなってしまった。

 幼馴染はこの丘から見える星空が好きだった。無論、僕も好きだが。


「ねえ、きみもこの星空と丘が好きなの?」


 唐突に、同い年くらいの女の子が僕の隣に座り、そう語りかけた。


「ああ。好きだよ」


 その返答を聞いた女の子はとても嬉しそうにはにかむ。

 しばらく、僕らの間を静寂が包む。

 そしてその静寂を破り、切り出したのは女の子であった。


「突然だけどさ、私のこと、覚えてる?」


 嗚呼ああ、その顔は忘れる筈もない、むしろ忘れたくない。

 勿論、僕は──


「うん。覚えてるよ」


 言葉を紡ぎ出した途端、そよ風が吹き、思わず空の方を向いてしまう。

 首と眼を隣の女の子に移した刹那には、女の子は最初から存在しなかったように、消えていた。


「これで本当のお別れだね。さよなら、僕の──」




 ──────最愛の人。

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星見のユメ 佐月今宵 @satuki000

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