第17話 記憶障害?
「拓也くん……。いーっぱい楽しいことしようね♡」
真っ暗な視界。
そんな時突然耳のそばから聞こえてきたその声に俺の生存本能らしきものが全力で警鐘を鳴らす。
やばいっ!これはガチなやつだ!?
必死に手足を動かそうとするがキツく縛られた手足は全く動いてくれない。
どうしてこうなってしまったんだ……。
俺は何故こうなってしまったのか、それを整理していくことにした。
今日の放課後まで遡る。
俺がついに鷺沼に復讐出来るとほくそ笑んでいた時のことである。
鷺沼が俺の教室までやって来たのだ。
そしてそのまま俺の腕を掴んで屋上まで連行したのだ。
「拓也くん、連絡先交換しようよ。よく考えたら付き合ってるのに連絡先知らないっておかしいもんね」
「ん?ちょっと待て。俺はお前に聞きたいことが出来た」
「え?どうしたの急に?」
「とりあえず俺らが付き合ってるってガチ?」
うん、意味がわかんねえよ。
俺はお前に告白した記憶も告白されてオッケーした記憶もねえんだわ。
奴が草ビッチ。あ、糞ビッチの間違いだったわ。
まぁとりあえずこの状況で分かったことはただ一つである。
目の前の糞ビッチもとい変態は何かしらの記憶障害を起こしている。
いやちょっと待て、これ俺が記憶障害を起こしている可能性もあるんじゃないか?
あー、なんか全部ごちゃごちゃになってわからなくなって来た。
こういう時は1から確認する必要がある。
「なあ、鷺沼。俺が今から言うことにイェスかノーか正直に答えてくれないか?」
「え?よく分からないけどいいよ……?」
「じゃあいくわ。俺たちは付き合ってるってことでオッケー?」
「もちろんイェスに決まってるじゃん」
落ち着け……。
こういう厄介な子に対して頭ごなしに否定するのは拗れると相場が決まっているのだ。
「そ、そうだよね〜。付き合ってるよね〜。ま、まぁ次の質問に移ろうかな……。告白したのは鷺沼からだったよね」
「え?ノーに決まってんじゃん。拓也くんが放課後の教室で私を押し倒して耳元であんなに情熱的な愛の言葉を囁いたんじゃん。記憶消えたの?」
「そ、そうだよね〜」
はい、もしかしたら俺の記憶障害かもしれません。
人間嘘をついたら誰だって行動に基本それが表れてしまう。
例えば目を合わせると目を逸らしたりする、瞬きが多い、などが挙げられる。
しかし、目の前の鷺沼の目はどこまでも澄んでいたんだ。
目の前の彼女の綺麗な瞳が嘘をついていないと俺に訴えかけて来ている。
もしかしなくとも俺は鷺沼に愛を囁いた過去があったのではないか?
そしてその記憶を失ったのではないか?
俺はひたすら思考を巡らせる。
思考することに夢中になっていた俺は、背後から忍び寄る鷺沼愛梨に気付かなかった。
後頭部を何かで殴られて意識を無くした俺は気がつくと……
身体が拘束されていた!?
そして今に至る。
俺の体操服を盗んだのは学年1の美少女でしたってマジで言ってんの? ごま塩アザラシ @zeo_19390503
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