第7話
以前よりずっと強化しまくったセキュリティに守られた我が家に到着する。
ペット二匹目は要らん。
さすがに面倒見切れない。
あと、多分、ヘンリィの情緒が不安定なるので、まじで無理。
蟲一匹通さない結界が健在なことを確認し、玄関のカギを開けた。
ドアをゆっくり開ける。
「おかえりっ」
開けた瞬間、待ってましたとばかりに飛びつかれた。
ぎゅうって抱き付いて、それからすんすん、胸を嗅がれた。
念入りだ。
汗臭かったか?
ごめんな、後で一緒に風呂入ろ?
「ただいまヘンリィ…寂しかったか?」
「ぜんぜんっ」
嘘吐け、と玄関で待っていた証拠の品々を見つけ笑う。
買ってやった玩具とかお気に入りのブランケットとか、玄関に散らばってますよ?
「俺は寂しかったなぁ。ヘンリィが居なくてすっげぇ寂しかったなぁ」
俺はヘンリィを抱き寄せて、よしよし頭を撫でながら、ぴんっと立った犬耳に囁く。
するとぺしょんって犬耳伏せられて、すりすり顔を胸に擦り付けられる。
「ヘンリィ、寂しくなかったのか?」
俺のシャツをまた着てる、その背中を撫でる。
尻尾はそろそろ回復させてもいいかもしれない。
心の傷も癒えてきているし。
将来、金色と茶に輝く尻尾がぶんぶん、な尻を眺めていると、ヘンリィがこちょごちょ俺の胸に言う。
「さみしかった…すっげぇさみしかったっ」
「素直なヘンリィは可愛いなぁっ」
「んっ」
よしよし褒めると、ヘンリィがふんすと鼻息荒くした。
強気でやんちゃなのは良いが、やっぱり素直でいてくれるのが一番だ。
そういう風に躾けたい俺は、良く出来ましたとヘンリィを愛でる。
「さ、今日のご飯はなんだ?」
俺は甘え始めたヘンリィを抱き上げた。
きゅんきゅん鳴いて、俺にすりすりなヘンリィが自慢げに応えた。
「かれー、だっ」
「おお、いいなぁ。楽しみだ」
抱っこしながらリビングへ、割られた窓ガラスは直して強化済みだ。
確かにキッチンからカレーの匂いがして、定時で上がった甲斐を感じた。
一緒に生活するために一新した家具家電が目について、もっと充実させたくなる。
夕食の準備の為に下ろすと、ヘンリィが俺の服の端を引っ張った。
「ごぉ」
「ん?」
「こんどのでかけんの、たのしみだなっ」
俺のシャツ着て俺のズボン履いた甘えっ子が笑う。
首には俺が作った特別製の首輪を付けている。
役所には所有物だと届けているから、正式俺の物だ。
あの雨の日に、俺に踏まれて怯えていたのが嘘のようだった。
「ごぉ、と、いっしょ、しあわせだっ」
夢のようだった。
だから、俺は、絶対に、誰にも奪われないように。
「ああ、俺も幸せだよ」
可愛いヘンリィを抱き締め、キスをした。
ヘンリィがきゅふふ、笑って俺を、抱き締めてくれた。
角と淫雨と鬱金色 狐照 @foxteria
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