第6話
俺の職場はくそったればかりだ。
クズ連中の集まりだ。
人の物は勝手に持っていくし使うし盗む。
俺は何度私物を盗まれたか、数えてない。
「おい、それ俺の上着だろーが」
「あれ、そうだっけ?」
悪びれない同僚に溜息も出ない。
「まぁいい、俺はもう帰るぞ」
とりあえず角を折る勢いで頭を叩き、俺は退社することにした。
仕事はきっちり終えている。
今日も弱い勇者とか腕利きの冒険者とか〆たので、給料分は働いた。
ダンジョンのボス役、疲れるわぁ。
手加減しないといけないのが、まじストレス。
でも、最近増えた同居人のお陰で、俺は毎日が楽しい。
たくさん稼いで、その稼ぎで色んな体験を一緒にするっていう思考、まじ最高。
「最近キチンと定時で上がられますね、この後予ご定があるのですか?」
俺に叩かれ蹲る同僚の相棒が、その背中を撫でながら俺に問う。
「ペット、飼い始めたからな」
「ペット!まじで!みたい!」
蹲っていた同僚が元気よく俺に飛びついてくる。
うざいので腹を殴っておく。
「お前、懲りろよ……ドマゴウ様がペットとは、珍しいですね」
おぐぐぐと唸りまた蹲る相棒に突っ込みながら、またまた聞いてくる。
こいつは一見まともそうだが、やっぱり俺の物を欲しがる。
…なんでなんだろな。
俺だけなんだよな、物盗まれるの。
弱い勇者も、腕利き冒険者も、みんなして俺の私物盗んでく。
「そうかもな。めちゃくちゃ可愛いからつい甘やかし…」
きゅうきゅん鳴く子犬の姿を思い出し笑うと、職場の仲間が全員俺を見た。
なんだ。
なんなんだよ。
「……特別な、存在ということですか?」
「まぁ、そうだな…一緒に寝てるし、なにより可愛し…」
「!大事な、存在ですかっ」
「……」
「答えてくださいドマゴウ様っ!」
「俺とペットどっちが大事ー!?」
「何時からですか、何時からそれはドマゴウ様の御心を独占してるんですかっ!!」
なんでか質問攻めが始まった。
こんな奴らだったか?
黙って質問攻めを浴びていると、だんだん不穏な事を言われ始める。
「八つ裂きだっ!」
「赦せんっ!処刑だっ!」
「ししせつだーんっ」
「犯し壊してくれるっ!」
おいおい、コラコラ。
俺は、ニッコリ、微笑んだ。
ヒって、言って、皆が黙ってくれた。
「俺のペットに指一本…いや、一目でもしてみやがれ…塵芥に還すぞ?」
角を三本生やし、目を真っ赤にさせ、翼を出して、も一度ニッコリ。
分かったかなー?
くそったれ共が真っ青な顔してコクコク頷いてくれた。
よろしい。
分かれば、よろしいのだ。
私物は幾らでも盗んで良い。
適当に買って、ちょっと魔力で強化してるくらいだから。
物に、執着心はない。
でも、俺のペットは、見られるのすら嫌だ。
「じゃ、帰るは、また明日」
俺は色々仕舞い、ダンジョンの裏口から出て行った。
背後から「おつかれっしたー!」と聞こえたが、無視して家路を急いだ。
早く帰ってやらないと、きゅうきゅんがぴすぴすに代わってしまう。
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