泡と消えゆく願いかな 三十と一夜の短篇第53回

白川津 中々

 あいつ死なねーかな。


 そんな風に思っていたら本当にくたばった。ざまぁない。


 気に入らない人間が多すぎる世の中だ。消えてほしい人間は無限に湧いてくる。せめて願った輩くらいは死滅してほしいもんだと思わぬ日はなかった。昼夜は問わず、夢も現も境なしに。


 それが叶ったっあればこれほどめでたい事もない。新たな人生の門出といってもいいだろう。



 そういえばゴールデンスランバーで主人公が謎の能力で殺されていた気がする。ひょっとしたら俺も似たような力が使えるようになったのかも知れん。よし。物は試しだ。


 

 丁度映るテレビの生放送。気に入らないコメンテーター評論家。軒並み殺してやろうと強く念じる。



「死ねぇ!」




 死なない。まぁ、そんなものだと横になる。しかしつまらん。いっそ世界中の人間が死んで、俺だけが残ればいいのにと不毛な願望を描くと、なぜだか息子が勃ち上がる。



「……一人じゃ虚しい夜もあるか。か」



 財布を見るとソープのクーポン。人恋しさに部屋を出る。願いも望みも、泡と消えゆく……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

泡と消えゆく願いかな 三十と一夜の短篇第53回 白川津 中々 @taka1212384

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る