第10話 おはよう
トントントンと小刻みになる音で目が覚める。
[チャリ…]
腕と足が拘束されている。
なんか頭がぐわんぐわんする。
「あれー?起きちゃったの?」
あいつが目覚めたことに気づく。
「…離せよ。誰にも言わないから家に返せ。」
「無理無理!だってあと少しだもん。」
と言って瓶のボトルを指差すアキ。
そのボトルには血がぽとぽとと落ちている。
管がどこに繋がってるのかみると私のクビに繋がっていた。
「やぁ…めて。」
「無理だよー。あと少しで煮込みスープも出来てディナーが始まるんだから。」
と言って、3皿のサラダを盛り付ける。
「朝輝は?」
「え?一緒にいた男の子は美味しそうなとこだけスープに入れたよ。」
と言って鍋を指す。
近くにあるまな板が血だらけだ。
そんな…本当に人間を食べるの…?
「茉莉奈と雄大くんは?」
「あっちだよー。」
と言って指差す方向をみる。
茉莉奈も私と同じように捕まっていて血がとられている。
「あの子はもう死んでるから あとで丸焼きにするの♡あぁ久し振りにこんないいお肉食べれるなんて幸せだなぁ。」
「…ま…りぃなぁ…。」
私は親友の死とそのことを笑顔で語るこの人に対しての怒りが爆発し涙が出てくる。
「あぁあ、可愛いのに泣かないの。」
アキが自分のハンカチで私の顔の涙を拭く。
「もう眠りなさい。起きてるだけ辛いわよ。」
そう言った時扉が開く。
「これ持ってけばいい?」
優大がアキに平然と話しかける。
「うん!あと少しで優大の分も取れるからね♡」
「はーい。」
なんで、なんで優大は捕まってないの?
助けてよ。
「ゆうだ…」
「なんでって思ってるでしょ?」
アキが優大を呼ぶのを遮る。
「優大も私たちと一緒なの。人の血肉を食べて飲んであの歳を保ってる。実は私よりも長生きなのよ。びっくりよね。」
言葉が出ない。
「この家も優大が建てた家らしいの。あのおばあさんが子供の時にあの子がくれたんだって。どこからそのお金出るんだろうね。」
1人喋りが止まらないアキ。
ガチャっとまた扉が開き優大が入ってくる。
「なに?起きてるの?」
「うん!お話ししてた!」
「早くスープ盛り付けてよ。」
「はーい…。」
しゅん…としながらスープを盛り付け始めるアキ。
優大が私の目の前にくる。
「なんで…?」
「なんでもなにもご飯食べるだけだよ。」
「なんで…そんなこと…」
「なんで君たちだったのかって?一番可愛いから。俺のタイプだったからかな。」
意味がわからない。
「茉莉奈は、馬鹿だから簡単に引っかかったけど沙里奈は難しかったなぁ。
今も俺のことなんか好いてないでしょ。俺は惚れてたんだけどなぁ…。ショック。」
「そんなこと思ってん…」
「だから食べるんだよ。綺麗で若いほど血もお肉も美味しいんだよ。しかも見た目も可愛いならかおだけ剥製にしてもいいかもって思ってる。」
ダメだ…もう頭が回らない。
優大が私を抱きしめる。
「よしよし。大丈夫。僕の心の中で君は永遠に生きるんだから。安心して眠りな。」
その言葉が私の耳に入ってきた最後の言葉。
もう真っ暗でなにも感じない。
夢だったら、もうそろそろ覚めるかな。
早くみんなと一緒学校行きたいよ。
放課後、公園でだべったりしたいな。
早く起こして。
Soupe au bouillon 環流 虹向 @arasujigram
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