0:神話


 薄暗い洞窟の中で少年が力なく横たわり、小さく身悶える。


 深夜、少年は騒ぎの中で目を覚ます。

 檻が開いているのに気付き、自由をその手に掴み取り、走り出した。


 騒ぎの中をがむしゃらに駆け、そしてそこで、少年は巨大な神の像と出会った。


 誘われるように、その内へと潜り込む。


 頭の中に、無表情の少女の姿が浮かぶ。


「……アルゼリーゼ?」


 少女は、その汚れの無い、澄み切った瞳で、少年の事を、観察し始めた。


 少年に尽くす為に。

 少年の望みを、願いを、叶えるために。






 ――太古の昔。


 ――大地に、星々の欠片が降り注いだ。


 その欠片の中には、幾ばくかの生存者達が残されていた。


 地に墜ちた彼らは驚愕する。

 その惑星の環境は、余りにも過酷なものだった。


 彼らは神秘なるもの”アルカナ”を使い、環境を穏やかで、実り豊かなものへと、変えようとした。


 しかし、 環境の変化には当然永い時間が掛かる。

 残された僅かな資源では、それまで命を繋ぎとめておく事は難しい。


 アルカナの魔法で多少の間、数年、あるいはもしかしたら数世代は、終わりの時を先延ばしにできるかもしれない。

 しかしどの道、種そのものをこの星に根付かせるまでには至らないだろう。


 彼らは決断した。


 残されたテクノロジーを風雪をしのげるよう、地中に埋め、託す事にした。

 いずれこの星に芽吹くであろう、この星を母なる大地とする知的種族の為に。


 彼らへの贈り物として。


 そうして一人、また一人と去っていった。


 ついには最後の一人となり、その一人も、程なく息を引き取った。


 その亡骸を、やがてシオンドールと呼ばれることになる大地が、静かに、ゆっくりと、包み込んでいった。






 ――それから、あまりにも永い時が流れ、いつしか新たな人の歴史が産声を上げたが、彼らシオンドールの人類は、誰が自分たちを創ったのかを、知る事は無かった。





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神星輝オルヴァニス i820 @i820

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