最終話 館が出来ても旅は続く
100.館が出来ても旅は続く
「いやー! どうよ、私の作った家は! なかなか立派でしょう!!」
俺とサイが始まりの街ファストグロウに館をもらってから半月が過ぎた。
その間、サイはひたすら家具集めに奔走し、課金アイテムにまで手を出して屋敷を完成させたのだ。
すごい執着心だな。
正直、怖い。
あと、どこに行くんでも俺を引きずり回さないでくれ。
「はいはい、すごいすごい。それで、俺だけにこの屋敷を見せたかった訳じゃないだろう? 俺だってこの屋敷にはいつでも入れるんだから。家具集めだって手伝ったし、配置だって手伝ったんだぞ?」
「そんな事わかってるって。フィートにお願いしたいのは、私のカメラになってほしいってこと」
「お披露目配信か」
「そういうことよ。じゃあ、始めよう!」
「はいはい。始めよう」
サイが始めたこの屋敷のお披露目配信はとても評判がよく、サイが配信した動画の中でも最高クラスの再生数を誇ったのだとか。
あとからでもじわじわ伸びているのは、サイがホムンクルスの作り方についてわかっている範囲の素材を話してしまったからだろうな。
配信内でまだ足りないって話をしたし、設備がないとホムンクルスは作り出せないとも話をした。
それでも、動画の中に登場したふたりのホムンクルスは十分なインパクトを与えていったようだ。
サイにはときどき問い合わせも来るらしいし、有名人は大変だね。
「そう言えばフィート、『飛行』スキルって覚えた?」
「『飛行』? まだだな。それがどうかしたのか?」
「いやね。フィートほど飛び回っていて『飛行』スキルを覚えていないっていうのも珍しい、というか初めての事例なんだって。知り合いのスキルマニアが言ってた」
そうだったのか。
俺はてっきり『飛行』スキルを覚えるために、これ以上苦労するものだとばかり考えていたのに、実際にはレアな事例だっただけだなんて。
サイに振り回されすぎていて何かを見落としていたのか?
「それでね、そのスキルマニアの子がフィートと話をしてみたいんだって。あと、検証もしてみたいと」
「つまり、どうすれば飛行スキルを覚えられるかの実験もしたいと」
「そうなるね。フィート、どうする?」
ふむ、悪い話じゃないな。
俺はひとつ頷くと了承の返事をした。
俺にとってもメリットのある話だからな。
渡りに船ってやつか。
スキルマニアっていう人が悪人じゃなければいいんだが……。
数日後、屋敷に呼び出されたスキルマニアの知り合いという人から、いろいろと実験と称した度胸試しをさせられたのは言うまでもない。
最終的には『飛行』スキルを覚えられたからいいものの、かなり大変だったぞ。
スキル取得条件の検証とやらも大分進んだとか言っていたし、よかったと思う事にしておこう。
「いやー、フィートが『飛行』スキルを覚えてくれて助かるよ。『滑空』スキルじゃ絶対にいけない場所へもこれで行けるから!」
サイがものすごくいい笑顔でのたまってくれるがこれが目的だったのか……。
「さあ! 次の冒険に出発だよ! 配信のネタも集めなくちゃ!」
「わかった。わかったから、今日はもう休もう」
「だめ! 今日から冒険に行くの!」
「……わかったよ。じゃあ、準備してくる」
「うん! 何が待っていてくれるかな? 面白いものだといいな!」
サイを止める事は不可能だな。
はあ、このまま俺とサイは冒険を続けるのか。
これも悪くはない、か。
銀翼の冒険者がゆくVRMMO冒険譚~ときどき(彼女が)配信中~ あきさけ @akisake
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます