永遠に仲良しさもなくば死、スイカと言うだけで連想する季節に自殺の名所めぐりで休日をつぶしてる

@terayama4

 

 好きな人の好きなところを挙げていこうと思うと悪口になってしまう。劣ったところや醜いところや嫌なところも好き。いやそういうところこそが好きなんだろうか?そういう嗜好の人みたいでそれは嫌だ。でも好きな人の話を友達にしてると悪口じゃんって言われるし自分でもあれ〜これ今してるの悪口か?ってなる。違う、恋バナなのに錯覚してしまう。恋バナだよ、死んでほしいけど褒めている、好きと言っている。

 好きな人のことばかり考えて日々暮らしていると会社で嫌なことがあってもあまり気にならなくなるので便利だ。でもその分好きな人のことで苦しみ悲しんでいる。自分がつるりとした黒い楕円形の石に変わっていくような感じがする。恋してるのにイメージが重く暗すぎる。どう考えても幸せになれない。好きな人がいると何となく力が湧いてくるような、勇気が出るような、無敵な気持ちになるけど、私の場合その先にあるのは黒い石なんだ。どういうことなんだろう。死ぬってことなのかな。それはみんな死ぬだろうけれども。

 つるりとした黒い楕円形の石になる前の私はかなり美しくて無敵だ。心も姿も美しい。着たい服はすべて似合うしぴったりの色の化粧品も一発で選ぶことができる。肌はつるつる心もすくすくと自信に満ちてなおかつ優しい。ついこの間まで会社の誰もいない場所でみんな死ねばいいのにって20回以上つぶやいていたこの私がみんなの幸せを祈っている。すごい、好きな人がいるからなんだ、すごい。この恋の先に待ってるのがつるりとした黒い楕円形の石になるという結末だとしても恋は偉大じゃないか?私は無敵じゃないか?一生に一度でもこんなに無敵になれて嬉しいよ。

 無敵の私は普通なら怖気づくことも全然平気でやってしまう。通勤途中に見かける探偵事務所みたいなビルの一室を探偵事務所に違いないと決めてかかって普通に入っていって「こんにちは。探偵事務所ですか?」「いいえ、違います。良い色のマニキュアを作る会社です」「そうですか、失礼しました。良い色のマニキュア、楽しみにしています」「ありがとうございます、ご期待に添えるよう頑張ります」探偵事務所じゃなかったけど、温かく対応してくれて良かった。怪訝な反応をされたら皆殺しにしようかと思っていた。無敵だから多少突飛な行動をしても他の人に受け入れてもらいやすいようだ。

 また別の日に通勤途中にある変わった苗字の家、異世界の入り口みたいなとびきり素敵な苗字の家のインターフォンをいきなり押して苗字が素敵ですね!と褒めてもありがとうございます!お茶でもいかがですか?となる。不審者みたいな対応されたら皆殺しにしようとこの時も思ってたから良かった、お茶おいしかったです。ありがとうございました。

 無敵になればなるほど私はつるりとした黒い楕円形の石に近づいていくとわかっているけど好きな人を好きな気持がどんどん大きく複雑に荘厳な趣をたたえていくから無敵さに歯止めがきかない。確実に黒い石になってしまう予感があるんだ。でもそれは不幸なことなんだろうか?無敵な気持ちがいくらあっても苦しみに覆い被されてしまう恋のつらさを黒い石という姿で表して存在するのは不幸なことなのか?だって恋は明らかに苦しい。明らかに悲しいよ。黒い石になって一目で恋をしているのがわかるようになったら少しはましになったりして…。でも黒い石の内側も悲しみに覆われているんだろうか?

 好きな人に好かれたらおしまいだ。好きな人が恋人になったらおしまいだ。好きな人に好かれてはいけない。絶対にお別れが来るから駄目だ。でも嫌われたら死ぬので恋の好きではない別の好きで好かれてなくてはいけない。永遠に仲良しでいなくてはいけない。困難な道のどん詰まりに黒い石が…?黒い石になったらその夢は叶うんだろうか。

 私がつるりとした黒い楕円形の石になったらまた手紙をください。私が今まで、あなたから送られてきた手紙をどんな想像を絶する方法で繰り返し繰り返し読んできたのかあなたは知らないし一生知られたくない。黒い石になったらそんな異常な方法は取らないでしょう。手紙を読むこともできないかもしれません。でも送ってください。私は返事を書きません。でも送ってください。

 私が一体どんな理由で黒い石になるのか私の好きな人だけは知るべきだと思うけど知られることはない。のんきに手紙を書いてよこして。返事の代わりに黒い石が送られてきて何だろうと思った好きな人が部屋に黒い石を飾ったら…さすがにキモすぎるかガハハ!!

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