その④
我が家の馬車はサラと共に一足先に帰されていたので、ルーファス様の馬車に乗せていただき、二人で向かい合って腰かけた。
「あ、これってダブルデートだ」
思わず口に出た。大好きな彼と、大好きな友達と同時に遊べる最高に幸せなシチュエーション。前世では一度もしたことがなかった。
「だぶるでーと?」
私の呟きが聞こえていたようだ。ルーファス様が首を
「今日のように二組の男女が仲良く交友をはかることです。ルーファス様はエリン様と
「うん。エリン嬢はピアのことをよく理解してくれていることがわかって安心した。ヘンリーは……今後ピアに
「……私もルーファス様とヘンリー様の
「ヘンリーは命拾いしたな」
何げに
自分の断罪と国外追放を
でも、エリン様とヘンリー様に出会い、好きになった。このお
歯をむき出しにしてニカッと笑う、
全くもって
「ところでピア、例のキャロラインだけど」
キャロライン? ちょうど考えていた人物の名前がルーファス様の口から飛び出し、慌てて向き直る。
「キャロラインのファミリーネームはラムゼーで合ってる?」
「……はい」
十歳の私はキャロラインの
私の〈予言〉を本当に信じてくださっているのだ。なんの
「ラムゼーは
養子ということは、ゲームの設定上キャロラインの可能性が高い。
「ラムゼー男爵家を見張っていらしたのですね」
「まあね。でもなかなかガードが固くてね、内情はあまり
「そうだったんですか……」
私と情報を共有してくれるなんてありがたい。ああでも、キャロラインの足音が聞こえてくるようで……
私が
「おい、誤解してないよね? キャロラインのことはきっかけにすぎない。もちろん純粋にピアに会いたかったから訪問したんだ! ヘンリーであれ、私のいないところで他の男とピアを会わせるわけがないだろう?」
「婚約者であるエリン様もいらっしゃるんですよ? そもそもどう見てもヘンリー様、エリン様一筋ですよね?」
「相手が
「嫉妬……ですか?」
意外な答えに目が丸くなる。
「そうだよ。昔言わなかったかな? 私の愛は重いって。そうそう、今後家族以外の人間に会う時は、私の
「友人宅に……オートクチュールのドレスはちょっと大げさでは?」
「じゃあ、もっといろんな服も仕立てないとね」
そう言いながらルーファス様は私の隣に座りなおした。私は地味な紺のワンピースを
「ルーファス様こそ思い違いをされています。私はこれまでモテたことなどありませんし、そもそもルーファス様のことで、たいてい頭はいっぱいです」
「ははっ、たいていって……化石に気を取られることもあるってことかな? よし! 化石に負けないように
ルーファス様は声を出して笑いながら、私の額にちゅっとキスをした。
弱気MAX令嬢なのに、辣腕婚約者様の賭けに乗ってしまった 小田ヒロ/ビーズログ文庫 @bslog
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