#3 手を取り合うわたしたち
しかし、そこに姿を現したのは、何度も映像で見た、二本の足で歩く「人間」ではなかった。わたしたちと同じように、全身をモフモフとした毛で覆われた生き物が三頭。ピンと立った三角形の耳も、わたしと変わらない。ただ、頭はボールみたいに丸い感じで、口や鼻もあんまり突き出ていなかった。身体も小柄なようだ。
「あなた方は……」
壇上のシンノスケ
「
「はい、その通りです。良かった、
灰色の毛におおわれた真ん中の一頭が、ちょっと舌足らずな感じの声でそう答えると、地面についた両手を折り曲げるようにして、丁寧に頭を下げた。
「私どもは惑星チュールという星からやって参りました、宇宙探査隊の者です。私は隊長のミューズと申します。盛大な歓迎、どうもありがとうございます。しかし、ここにも……」
彼女は、大きな青い瞳で周囲を見回した。
「
惑星チュールにおいても、事情はこちらと全く同じで、
こちらと違うのは、何機かの宇宙船が後に残されたという点だった。その航行原理までは不明ながら、彼らは苦心の末にその操縦法をマスターして、こうして宇宙へ進出することができたのだった。
兄弟のような二つの星。ミューズたちも、初めて目にした
さっそくこちら側、惑星ピュリナの代表である
「私たちの分析では、
「しかし、残念ながら
そんなわたしたちの、
「いかがでしょう。もし良かったら、皆さんの代表を、まず惑星チュールにお招きしたいのですが。その上で、共同で
こうしてミューズたちの宇宙船は、トップランクの学者たちを中心として編成された
その出発に際しては、やはり私たちの居住ブロックにある
「すごいよね、あの遠い宇宙に、わたしたちもとうとう行けるようになったなんて」
隣のココが、やはり興奮気味に夜空を見上げる。今日は人工流星は飛んでいないから、星々がただ静かに輝くばかりだ。
壇上に並んだ、
「私たち
「行ってらっしゃい! 気を付けて!」
「仲良く頑張ってきてね!」
わたしとココも、大声で叫ぶ。
ミューズたち
「きっと会えるよね、わたしたち。
夜空を見つめながら、ココが言った。その大きな黒い瞳には、たくさんの星々が映っているようだった。
「うん、きっとね。見つけて来てくれるよ、絶対。
力強くうなずいて、わたしも星空を見上げる。あの無数の星々のどこかで、いつかきっと。
(了)
【完結】星空へ去った人々へ ~Her master's voice~(全3話) 天野橋立 @hashidateamano
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