第14話 奈落【2】

沈んでいく、

どこまでも。

底は見えない。

どこまで沈むか分からない。

息も出来ない。

苦しいのに、

助けを呼ぶことすらかなわない。

この暗闇から救い出して。

願うけど、

私は知っている。

助けてくれる人など、

誰一人としていないことを。


父とは距離を置いていた。

否、

置いていたかったのだ。

父は他人に厳しい人だ。

そして、

自分の意見が絶対だと信じている。

故に、

常習的に、

他人の人生に口を挟んでいた。

良く言えば生きていく為のアドバイス。

悪く言えば余計なお世話。

意見の押し付け。

そして最悪なことに、

父のアドバイスで人生が破綻したとしても、

責任を取らないと明言していた。

会う度しつこく、

アドバイスという名の拷問を受けていた人もいる。

私自身に否はないけれど、

【娘】というだけで、

恨まれることもあった。


そんな父は、

精神科にかかること、

そして安定剤を服薬することに、

強く反対していた。

【精神安定剤は毒薬】

それが父の持論だった。

精神科にかかる患者は皆甘えている。

そんな古い考えまで持っていた。

だからこそ、

児童相談所内の精神科に、

父が来る事は、

私にとって苦痛でしかなかった。

帰宅したら、

甘えている、

調子に乗るな。

きっとそんな暴言が飛んでくることだろう。

私の心は弱い。

些細な言葉のナイフが、

深く胸に突き刺さるのだ。

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生きる-精神障害闘病記- 春風桜 @sakura_harukaze

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