第13話 奈落【1】

児童相談所への通所が始まってから約半年。

私には、

【精神科での治療が必要】

という判断が降された。


思えば、

同じ道を何度も往復したり、

階段の登り降りが辞められなかったり、

精神に異常をきたしていると思われる行動が多く見られた。


そんな私は、

中学二年生の頃、

児童相談所内に併設されている精神科への通所を開始する事が決定した。


私についた病名は、

【強迫性障害】

というものだった。


強迫性障害は、

繰り返し行動を特徴とする病で、

鍵の開け閉めを繰り返したり、

中には何度も手を洗うのを辞められない患者さんも居ると聞いた。


私も例に漏れず、

繰り返し行動が辞められなかった患者の一人だ。

加えて、

横断歩道の白い線は踏んではならない等、

自分の中に何かしらのルールを設けてしまっていた。


繰り返し行動も、

自分に設けてしまったルールを守るのも、

度を超えていた為、

非常に苦しいものだった。


できる事なら辞めたいと、

ずっと願っていた。

しかし、

現実は残酷なもので、

辞めることが非常に困難だった。


守らなければ、

殺されるのではないか。

災害に見舞われて、

悲惨な目に遭うのではないか。


そういった強迫観念が強く、

当時の私は、

繰り返し行動を辞めることができなかった。


当然のように、

精神科にて、

精神安定剤が処方された。


飲み始めということもあり、

現在の私と比較すると、

非常に軽い薬を、

少量処方されていた。


ただ、

私は何年も前から繰り返し行動を行なっており、

中学生の頃、

既に病状は軽いと言えるものではなくなっていた。


軽い薬では効果がなく、

少しずつ安定剤の量が増えていった。


そんな時、

私にとっては最悪の言葉を担当医から告げられた。


「お父様と一度お話をさせてください」


担当医が父に何を話したいのか、

分からなかった。

ただ、

病状について話されるのは怖い。

父がまた、

「甘えるな」

など、

否定的な言葉を投げかけてくる可能性が高かったのだ。


私の心は不安でいっぱいだった。

それでも、

父と担当医が面会する方向で、

話が進んでいった。


心身共に疲れきっていた私は、

自分自身の意見を口にする勇気も、

持つことができなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る