第12話 混沌(7)

中学二年生。

悪気なんて、きっとない。

ただ、生徒の口から出る言葉は鋭い棘となり、

私の心に突き刺さる。

自己否定をされ続け、

自信を失った私の心を壊すには、

じゅうぶん過ぎる破壊力の棘である。


久しぶりに見る中学校の校門。

ひどく心が重い。

下駄箱で上履きに履き替えていると、

背後からコソコソと話し声が聞こえてきた。


「え?学校きたの?」

「もう来ないと思ってた」

「よく学校に来れたよね」


生徒たちからすれば、

悪意も悪気もない、

素直な感想だったに違いない。


だけど、私にとっては、

いじめへのカウントダウンの開始の合図にしか聞こえない。


「無理して学校に行かなくてもいいのよ?」


児童相談所の担当者は、

中学校への通学の強制をすることはなかった。

しかし、問題は私自身と家族にあった。

私は、恐ろしいまでに自信を失っていた。

日々の父の言葉に追い詰められ、

精神的に限界を超えていた。


どんな小さな言葉でも、

積み重なれば毒針となる。

甘ったれ、調子に乗るな。

きわめつけに、

食って寝て学校に行くだけで家畜と変わらない。

私の精神は崩壊寸前、

というより、既に崩壊していた。


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