???vs霧島龍牙!!(vs黒メガネさん)
『READY⋯⋯ FIGHT!!』
「⋯⋯は?」
草原に1人、ある青年が現れた。。黒い髪に生物とは思えないほど無機質に光を反射する黒い目。上は黒のパーカーの上から黒のコート、下は黒のカーゴパンツ。街中を見ても5人くらいはいそうな格好であった。そんな彼は椅子に座っているような格好で転移させられ、後ろに転んだ。
「⋯⋯うーん?僕マクドでメシ食ってたとこなんだけど。どこ?ここ。とりあえず潤さんに言われた通り警戒警戒⋯⋯」
首を傾げながら立ち上がると、懐⋯⋯正確にはショルダーホルスターからリボルバーを引き抜く。
「⋯⋯」
『こりゃ面白い。異世界のようだな?記憶ははっきりしているか?キョウ?お前の名は
青年⋯⋯享一の頭の中で誰かの声が響く。
「うるさい。黙ってろ」
『まぁそういうな。ほら、誰か来た』
誰かの言う通り、草を踏み折る音が近づいてくる。ついでに殺気も近づいてきた。享一が目をやると
相手は既に刀を抜いていた。どこかの古めかしい軍服を着た赤と青のオッドアイの青年だった。
「⋯⋯」
「貴様が楡谷享一か?」
「⋯⋯誰です?ここはどこです?」
「⋯⋯何も聞いてないのか?ここは最強を決めるデスマッチだ。俺は
説明する龍牙。それを聞いて享一は両手をあげる。
「⋯⋯する」
「は?」
「降参する!!サレンダーです!!」
「はぁ!?」
享一のとんでもない発言に開いた口が塞がらない
龍牙であった。
「無理無理無理、馬鹿じゃねぇの?僕はただの一般人だしこんな殺意の塊みたいな奴に勝てるわけねぇじゃん!!」
リボルバーもホルスターに戻し、享一はじりじりと後退していく。罠にかけるとかそんな思考はなくただただ逃げるためだった。
「逃すと思うか?」
それを龍牙は許さなかった。持っていた刀の切先を後ろに向け、脇構えのような構えを取る。
「常闇の剣戟⋯⋯」
一息で享一との距離を詰め、すれ違いざまに享一の首に向けて一閃。それはまるで幻影のように揺らめいて見えるほどに。
「朧⋯⋯裂殺」
享一の首がゴロリと落ちる。
「⋯⋯ふん、他愛無い。全く、こんな奴が何故ここに⋯⋯」
そう言って呆れながら龍牙は振り向いた。しかし、その顔は驚愕に変わる。
首がなくなった享一の傷口からいつのまにか頭蓋骨が生えていた。頭蓋骨はだんだんと肉に覆われていき、やがて完全に復活した。瞼が開き、黒い目が龍牙の方を見る。
「⋯⋯タネも仕掛けもないってね」
「⋯⋯」
「そういう能力なんですよ。全く⋯⋯迷惑だ」
『不死身って人類の悲願だぜ?迷惑って⋯⋯泣けるぜ⋯⋯』
「黙ってろ⋯⋯。だから千日手になるからこのまま僕の負けって事で⋯⋯」
「⋯⋯ははは!」
突然笑い出す龍牙。
「死にたきゃ殺してやるからこいよ」
「⋯⋯まぁ死にたいけどお互い面倒くさいのは良くないでしょう?」
享一は交渉を試みる。
「30分。30分逃げ切ったら僕の降参を受け入れる。そのかわり、それなりにはやるから。面倒ですけどね」
「⋯⋯ほう?」
「僕を殺し切れる保証もないですし、タイムリミット設けたほうがわかりやすいでしょう?」
「⋯⋯いいだろう。そのかわり、本気でこい」
「⋯⋯わかりました。今から30分でいいですね」
すると空に大きく赤文字で『0:30:00』と大きく写し出された。
「へぇ⋯⋯用意がいい事で」
「わかりやすくていい。始めるぞ」
龍牙が切先を享一に向けると同時に享一は拳銃とサバイバルナイフを抜く。
大きなブザー音とともにタイマーが動き出した。
「常闇の剣戟⋯⋯ 牙狼暗澹ノ刃!!!」
龍牙が放った斬撃は上下五対の狼の牙のように享一に襲いかかる。それに対し、享一は足元にあった自らから離れた頭を蹴り上げる。当然頭は斬撃によってぐちゃぐちゃに破裂したが、吹き出した血液が固形化し斬撃を受け止めた。
「⋯⋯珍しい術だな。そして自分の体だったものを平気で使うか」
「まぁ慣れました。じゃ、行きますよ」
そう言って享一はナイフを振る。固形化した血液が何十匹もの蛇のように空中をうねうね動き始める。
「ふんっ⋯⋯」
龍牙が冷静に血の蛇を斬りつけると全ての蛇がパァンッと破裂し顔に赤い血が降りかかる。龍牙がそれを拭った時にはもう享一は視界内にいなかった。
「⋯⋯ほう、やるな」
そうにやりと笑った龍牙は刀の切先を下に下げる。
「常闇の剣戟・金環黎泡」
先が地面に付くと白い円が広がる。円は草を斬り飛ばしながら広がり、やがて死角からナイフを振る享一の腕を吹っ飛ばした。
「⋯⋯」
「速いな。スタイルはどちらかと言うと暗殺よりか?」
「まぁ人並み程度にはね」
そう話している間にも骨まで斬られ砕かれた腕が治っていく。痛みに顔を歪めもしない。
「⋯⋯なんか気持ち悪いなお前」
「負けなきゃいいんですよ負けなきゃ。さて、そろそろやりますね」
享一はそう言いながらナイフを振る。するとナイフの刀身が伸び、鍔が広がり、柄が伸びていく。たちまちナイフは日本刀に姿を変えた。
「それが能力か?」
「まぁ、ね。さぁ、やりましょう」
そう言って、享一はリボルバーの銃口を向けた。
*
斬り合い殺し合いを続けて幾分か、龍牙は享一をやはり気持ち悪いと思っていた。享一が着ているコートからナイフを取り出さなくなってから数分ほどたっている。既にリボルバーも捨てている。しかし能力でどこからか斧や鎌、グレネード、銃、果ては龍牙の世界にはない謎の武器すらも取り出して破壊されれば放り投げて次の武器を錬成するを繰り返している。享一の戦闘力はある程度訓練された兵士程度だが、それでも龍牙には遠く及ばない。
(なぜこんな奴が最強を決める大会に出れるのか不思議だったさ)
龍牙は心の中で歯軋りする。
(違う!こいつは他とは違うベクトルでやばい!こいつ⋯⋯死に慣れてやがる!!)
普通動物なら生きようとする本能が働く。本人が気づいていなくても危険を察知し避けることすらもある。人間だってそうである。刀の間合い、銃口の向く先、危険を察知したならその範囲に入ろうとしないし、既に入っているなら抜け出そうとするだろう。死線をくぐり抜けた猛者なら本能を抑え込み、恐怖を押し潰して敵に斬りかかることができる。龍牙だってそうだ。
(だが、こいつは違う!ハナから死を恐怖していない!生きようとしていない!しかも見る限り狂ってるわけでもなく至ってまともに見えるのが気持ち悪い!体の欠損も死ぬことすら何度も経験しているだろうに⋯⋯なぜそんなに平然と一般人を装って生きられる!!)
「常闇の剣戟・弓張狼爪!」
そんなことを思考し、技を繰り出す龍牙。前へ踏み出しながら繰り出すその剣筋は弓張月のように弧を描き、斬撃は享一の腕を両断しそれでも止まらず胴体を縦に斬った。享一は痛みにも身体の一部が切り離されたことにも反応せず、あくまで冷静に斬れ飛んだ腕をつかんで刀に変える。そのまま切りつけるが、龍牙の返す刀ではじかれる。
「……」
『ほら、これで何回死んだ?もう嫌なら代わるぜ?』
「うるさい黙れ座ってろ」
「なにか言ったか?」
「いいえ何も」
「そうか、ならもうそろそろ終わりに……」
ガシャン
龍牙が踏み出した足に今さっきまでそこになかったトラバサミが喰いついた。
「……は?」
「……」
思わず動きを止めた龍牙の首を断つように刀を振る。あくまで当然のように、それが普通であるように首を切り飛ばそうとする。
「ちぃっ!!『絶対零度』ォォ!」
草原が凍てついた。龍牙の能力の一つである温度を下げる能力。それを用いて半径50mの範囲を氷結させた。享一も例外ではない。
「ふぅ⋯⋯全く⋯⋯本来なら凍結させた時点でみんな死んでるが⋯⋯万全を期す!」
龍牙はトラバサミを叩き斬って外した後、刀を納めてから両手を前へ突き出した。目を閉じて集中すると手の間に火花が散り始める。火花は輝く光の玉となり手を広げると共に大きくなっていく。
「塵になれ!!神魔砲!!」
そう叫びながら光球を押し出す。光球は点に収束し、そのエネルギーは極太のレーザーとなって放出される。大地は削れ、草は焼け、悉く全てを飲み込んで破壊した。閃光が晴れた時には龍牙の目の前には抉れた大地しかなかった。
「⋯⋯ふん!やっと死ん」
手が
手の骨が
いきなり龍牙の首を絞めた。
「ごっ⋯⋯ごぁ!?」
「⋯⋯人生で2回目だ。完全に塵になったのは」
声が聞こえる。手の部分だけだった骨は腕から復活し始め、筋肉が纏わり付き、やがて完全な人間となった。
「まぁ、1回目は実験の事故なんですけどね。こうやって生き返りましたけど。これで自殺も他殺も諦めました。僕の能力にはたとえどんな状態であろうと生き返るって言う副次効果⋯⋯呪いがありまして、お節介な神の祝福か、はたまた悪神の悪戯か⋯⋯どうだと思います?」
「ぎっ⋯⋯離せ!!」
虚無を形にしたような目で見ながら絞める享一に対し、龍牙は胴体を両足で蹴り飛ばして手から離れた。
「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯クソッ」
「⋯⋯後数分。僕を殺せますか?龍牙さん?」
「⋯⋯やってやるよ⋯⋯」
首と両腕両足が同時に吹っ飛んだ。斬られた傷口が凍って血は噴き出なかった。しかしその程度では再生は止まらない。
(ヒドラの伝説ではヘラクレスは松明で斬った傷口を焼いて再生を止めたらしいが⋯⋯何十回ともやったから結果はわかってたけど、速すぎる。いや、そんなアレじゃな)
今度は左目が斬られた。
「うぐ⋯⋯」
再生するし慣れたとはとはいえ痛みがないわけじゃない。しかし問題はそこじゃない。
(見えない⋯⋯こいつが詰めるところが見えない⋯⋯あいつ本体もさっきから見失ってる。というか今のも一つ前のも、斬られたんじゃねぇな。勝手にばっくり傷口が開いた感じだ。速かろうが上手かろうが物体が通る感覚があるのにそれすらない。しかし⋯⋯これは⋯⋯)
今度は身体中を切り刻まれた。その中でも享一は思考を止めない
(考えろ考えろ⋯⋯思考を止めるな⋯⋯ある程度本気でやる以上負けないために取っ掛かりを⋯⋯)
『はぁん、やるなぁあいつ。決め球じゃねぇがえけげつない』
突然黙っていた『そいつ』が呟いた。
「いいから黙ってろ」
『いんや面白いからヒント出してやる。あいつは今まで温度を下げることはしても上げることをしなかった。いやしないってよりできないってのが正しいだろう。それを極めればどうなると思う?』
「⋯⋯あ?」
『ふむ、言い換えようキョウ。物体が絶対零度下に置かれたならどうなる?』
「⋯⋯?熱運動がゼロになって止まるだったか。それがどうし痛え?」
『グレイト。それを宇宙規模に広げてみろ』
「⋯⋯宇宙膨張熱か。世界を冷却し時を止めて斬ってるってか。どうすんグハァ、そんなん。てかお前が科学語っていいのか?」
そんな問いにケタケタ笑う『そいつ』。
『そんなもん関係ないわ。俺には科学もオカルトも同じだからな。んで?どうすんだ?』
「無理かなぁ⋯⋯グフッ、こんなん。」
『いいや、手はある。①時間を止める②あいつを足止めする③膨張熱レベルの火力で熱を供給する。こんなところかな?』
「バカ言うんじゃグヘッ、ねぇよ。①は能力的に無理、②は見えない相手をどうやって足止めガァ、するんだって話、③はそんな火力は⋯⋯」
『ある。お前はもう知ってるはずだぜ?キョウ?』
「⋯⋯はぁ、アレか。やりたくないけどまぁ、やってみるか。」
享一は嫌そうにため息をついてから、自分の肉片を拾い、手を前に差し出す。
「⋯⋯曰く、燃え盛る枝である。曰く、かの世界を燃やし尽くした巨人の持つ炎の剣である。曰く、かの巨人の妻が九つの鍵のついた箱に収めているという。」
肉片に一人でにオレンジの火が灯る。火は享一の手を焼きながら延びていく。この間も攻撃を受け、時々体制を崩しながらも詠唱を続ける
「⋯⋯今それを借り受けよう。神話解釈、レーヴァテイン!!」
火を掲げると同時に閃光が走った。いや閃光と言っていいほど優しいものではなかった。空間をオレンジと白に塗りつぶすほどの光量と草原はおろかその下の土までも吹き飛ばして焼き尽くす破壊力。見る人が見れば核爆弾が落ちたと言うだろう。
それは世界を冷やし周りを停止させる龍牙の能力でさえ打ち消し、逆に吹き飛ばした。
「そんな無茶苦茶な⋯⋯!!」
闇をさらに込めることで防御力を上げたとしても龍牙の体が軋み、ボールのように簡単に吹っ飛んだ。ゴロゴロと転がる龍牙の頭に浮かんでいるのはクエスチョンマークだった。
(バカか?都市数個吹っ飛ばすレベルの爆弾か何かを自爆技として平然と使うとかどうなってやがる!!そしてそんなものどうやって作りやがった!?)
「そんなことより⋯⋯奴は⋯⋯」
やがて土煙が晴れ、クレーターが露わになる。その中心で座り込む享一。レーヴァテインはとうに燃え尽き、握っていた右腕は消滅していた。体中が炎に巻かれて炭化し、半分崩れていた。しかし、それでもなお能力で生きていた。
「⋯⋯神話解釈。能力と魔術と知識を元に神話武器を再現する術式。未完成の術式だけどね。一度使うと俺の魔力と肉体を吹っ飛ばしてその能力を顕現しちまうしそれでも三分の一の性能しかない。だからやりたくなかったんだ」
享一はぶつぶつと独り言を言う。
「多少なりとも本気でやらないといけないからね。そういう約束だからね」
「⋯⋯」
「でももうすっからかん。今のがほんとのほんとに最後の一撃。魔力はゼロだし三分の一とはいえ神代の炎に焼かれて炭化してて俺の能力でも治りにくいしね。関節ほぼ全部死んで動けないし治るのを待つだけの時間もない」
「今からでも制限時間を撤廃してもいいが?」
「とんでもない。治ったとしても君には一層勝てないよ」
ほとんど無表情の龍牙に自虐的に笑う享一。体が揺れるたびにパラパラと灰が舞う。
「⋯⋯」
「流石にもうしんどいからサレンダーしたいんだけど⋯⋯?」
「⋯⋯チッ、いいだろう」
『GAME SET!! WINNER!! 霧島龍牙!!』
龍牙が舌打ちをしながら刀を納めると同時に試合終了の合図が鳴り響く。
「あぁ⋯⋯やっっと終わったよ。あぁーしんど、潤さんの仕事並みにしーんど」
「⋯⋯誰だそいつ」
「保護者みたいなものですよ。まぁ諸々恩がありますからたまに仕事手伝ってるんですよ」
「夏目潤か?」
「⋯⋯なんで知っているんです?」
「お前の世界からは元々そいつが参加してたんだ」
それを聞いて享一の顔が少し歪む。
「⋯⋯また巻き込まれたのか」
「また?」
「ああこちらの話です。ではさようなら。もう会うこともないでしょう」
「⋯⋯あぁ」
享一は少し笑ってそのまま消えていった。
「⋯⋯」
龍牙は消えた跡を微妙な表情で見つめた後、背を向けて立ち去った。
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