第18話

 ガクリと前のめりに倒れる。早くこのことを伝えなくては。この空間から速く脱出しなくては。


「――ヨクミヤブッタネ、オドロイタヨ」


 頭の中に直接響くようなノイズだった。上体を起こして辺りを見回す。


「――ドコヲミテイル、コッチダヨ」


 急に体が宙に浮き、勢いよく叩き落された。遊ばれている。正体不明の何かに。


「ねえ、あなた一体何なの?」


「――ソレヲシラベルノガ、キミノヤシゴトナンジャナイノカイ――」


 ゲラゲラというノイズが響く。この状況は確実にマズい。正常な状態であっても苦戦しそうだが、この空間内は負荷が強すぎる。消耗が激しい中で、あと何度攻勢情報を使えるか。


「情報制御レンジ拡大。攻性情報展開。サーチングモードへシフト。当該対象の探索を


 頭をぶん殴られた。いや、直接攻撃されてはいない、先ほどの頭痛が、さらにひどくなってきていて、まるで殴られたような衝撃を感じただけだ。調べようとするだけで、この空間そのものが攻撃しているかのようだった。


「調べようとするだけで…攻撃される…?」


 もしかしたら。いや、よく考えれば直接攻撃を受けたのは一回だけで、それ以外はわたしが勝手にダメージを受けていただけだ。そういうことか。震える足で立ち上がる。


「情報制御レンジ拡大。攻性情報展開。ターミネートモードへシフト。当該対象の破壊を目的とした広域空間での疑似戦闘許可を申請」


 ある一点に向けて放った無数の槍が風切り音を鳴らして闇の中に消えた。


「――ザンネン、ハズレダ――」


「いいえ、当たりよ」


 わたしは両足でしっかりと立っていた。やはり、こちらが攻撃をしてもダメージを一切受けていない。


「この空間は、調べようとする行為に対してダメージを与える。当たりでしょ」


 ゲラゲラ…というノイズは響かなかった。まさか、逃げられた?


「やれやれ。ちょっと遊んであげたら調子に乗っちゃってさ」


 耳元で囁かれて、即座に逆方向へ退避する。全く気配を感じなかった。


「飽きたら開放してあげようと思ってたけど、やめた。キミ生意気だし」


「あら、それがあなたの正体ってわけ?」


 暗闇の中から姿を現したソ繝サ蟆主・縲豸シ螳ョ繝上Ν繝偵→諢溯ヲ壹・繝ェ繝ウ繧ッ

繝サ繝舌せ繝ォ繝シ繝縺ァ繧キ繝」繝ッ繝シ繧呈オエ縺ウ繧 姿が暗闇に紛れると落ちかけた頭が元に戻った。今のジャンク情報は一体…。


「あぁ、無理無理。キミごときじゃ認識できないよ。さあどうする。攻撃してみるかい?けど、当たらないと思うけど」


 言い終わるが早いか、先ほど投げた槍が私に返ってきた。回避したものの、何本かが刺さった。傷を治したが、攻勢情報の残りはあとわずか。もし脱出のため現実空間への位相調整を行っている間に攻撃されたら、そこでおしまい。それなら。


「あなたを倒して、この空間を崩壊させる」


 ゲラゲラと笑い声が聞こえる。できるものなら、やってみればいいと。見せてあげるわ。あたしの切り札よ。


「情報制御レンジ拡大。攻性情報展開。バーサークモードへシフト。当該対象の破壊を目的とした広域空間での戦闘を『許可する』」


 髪留めがはじけ飛んだ。それを直すことはない。目の前の敵を破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破壊する。破k






「もしもーし。こちら朝倉涼子。今報告いいかしら?どうぞー」


『こちら喜緑江美里。かまいません。どうぞ』


「あちこち捜索したけど天蓋領域の人型ターミナルは見当たらなかったわ。この辺りにはいないんじゃないかしら。もう帰投してもいい?あ、どうぞー」


『そうですか。いいでしょう。帰投を許可します。ただし、アクセス権は再度剥奪します』


「はいはーい、了解よ」


 通信を終了し、朝倉涼子はニヤァッと笑った。

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涼宮ハルヒの__ むーらん @muuran

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