致死率は年齢によって異なる

 さて、新型コロナウィルスの致死率を様々な病気と比べてきましたが、若い読者では「まぁ、言ってもその致死率は人口全体のものでしょ? 私の年齢では致死率そんなに高くないもの」という方もいるかと思います。


 おっしゃる通りです。

 新型コロナウィルスの致死率は地域のみならず、年齢によっても異なります。

 ついでに基礎疾患があるかどうかでも大いに違います。


 今回は、年齢別の致死率について話しつつ、他の病気でも年齢の違いが見られたものについて軽く触れていこうかと思います。


 まず新型コロナウィルスの年齢別の致死率を色々と見ていきましょう。


 ざっくり分けるとすれば、とある論文は二〇二〇年一月一日から二月十一日までの中国の推定総感染者数の中での致死率は六十歳以上を3.28%とし、六十歳未満を0.145%と記しています[4]。


 細かく分けて致死率を見るのであれば、同じ論文は以下の数値を提示しています[4]。

 〇から九歳    0.00161%

 十から十九歳   0.00695%

 二十から二十九歳 0.0309%

 三十から三十九歳 0.0844%

 四十から四十九歳 0.161%

 五十から五十九歳 0.595%

 六十から六十九歳 1.93%

 七十から七十九歳 4.28%

 八十歳以上    7.80%


 二〇二〇年三月一日から五月十六日までのニューヨーク市の、数理モデルでの解析で算出された致死率も、年齢が大いに関わっているとしています[18]。

 二十五歳以下    0.011%

 二十五から四十四歳 0.12%

 四十五から六十四歳 0.94%

 六十五から七十四歳 4.67%

 七十五歳以上    13.83%


 数値自体に違いあるものの、やはりどちらの論文でも年齢とともに致死率は上がっています。


 対して新型コロナウィルスと同じく、多くの把握されない感染者が出たとされるH1N1インフルエンザでは、若い患者が主に亡くなったとしています。


 ある論文では、H1N1インフルエンザも季節のインフルエンザも推定死者数の規模が似たようなものとしていますが、六十五歳以下の死者が季節のインフルエンザでは19%なのに対し、H1N1の場合は62%から85%と三倍以上だと考えています[21]。


 この傾向は日本でも観測されており、二〇一〇年の三月三十日に厚生労働省が発表したH1N1の死亡数は累計198人、うち77%が七十歳未満でした[36]。


 更にH1N1の死者数は日本においてU字型が観測されており、老人と子供が特にリスクが高かったようです[30]。

 感染者の78.4%が二十歳以下とされている一方、死亡数は十五歳から十九歳が最も低く、それよりも年齢が低い患者と高い患者の両方で死者数が増えています[30]。


 ということでH1N1では全体の致死率はおよそ0.001%でしたが、七十歳以上では0.04%とされており[30]、やはり高齢な患者はH1N1でも新型コロナウィルスでも若い患者よりも高いリスクがあると言えるでしょう。


 その反面、新型コロナウィルスでは若い死亡例は比較的少なく、H1N1とはそこに関しては一線を画すようです。


 実は若い患者が多く亡くなるパンデミックは、二〇〇九年のH1N1インフルエンザ以前にも、一九一八年のインフルエンザで見られた現象です。


 六十五歳以下の死者数が全体の何割を占めていたかというと、二〇〇九年のインフルエンザが約80%、一九一八年のものがおよそ95%とどちらもかなり高いです[37]。

 対して新型コロナウィルスでは、大体0.6%から2.8%と言われています[37]。


 実は一九一八年のインフルエンザは非常に特徴的な年齢別の致死率が見られています。

 H1N1がU字型であれば、一九一八年のインフルエンザはW字型と言えます[38]。

 お年寄りと、幼い子供に加えて、二十歳から四十歳の大人の致死率が特に高かったのです[38]。


 それに比べて新型コロナウィルスは右肩上がりの致死率グラフ。

 どちらのインフルエンザとも異なる年齢別の致死率傾向となります。


 年齢別の致死率は、他にサーズSARSのものが記録されています。


 二〇〇三年の五月頃のWHOの報告だと、サーズSARSの中国では致死率は年齢と共に上がっているものしています[34]。

 二十歳から二十九歳 0.9%

 三十歳から三十九歳 3.0%

 四十歳から四十九歳 5.0%

 五十歳から五十九歳 10%

 六十歳から六十九歳 17.6%

 七十歳から七十九歳 28%

 八十歳以上     26.3%


 同じ報告書によると、香港での年齢別の致死率も似たような傾向が見られます[34]。

 〇歳から二十四歳   0%

 二十五歳から四十四歳 6%

 四十五歳から六十四歳 15%

 六十五歳以上     52%


 致死率自体では新型コロナウィルスはサーズSARSと大きく異なりましたが、年齢と致死率の関係性では似ているようです。


 ということで年齢別の致死率は、H1N1ではU字型、一九一八年のインフルエンザではW字型、そして新型コロナウィルスとサーズSARSでは右肩上がりという三種類の傾向が見られました。

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ちょっと濃ゆいコロナ研究のお話 中 真 @NakaMakoto

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