『かめごろ』
やましん(テンパー)
『かめごろ』
やましんが生まれ育った町のとなり町には、二つならんだお池があります。
元々は、ひとつのお池でしたが、江戸時代に仕切られて、いまは、ふたつのお池に別れております、
むかしは、その、あたりは、かなり、深い森がありましたが、最近は、開発が進み、現在は住宅地の中です。
古くからの、名高いお寺もあり、幼稚園も、小学校も、さらに、大学もあるという、なかなかの、文化豊かな土地柄でした。
やましんは、小さいころ、少しのあいだだけ、亀さんを飼っていました。
しかし、あまり、やましんは、一生懸命世話するタイプではないので、父が亀さんを可愛そうに思ったか、ある日、このお池に、父の自転車に乗せられて、亀さんを放しにゆきました。
『かめさん、ばいばい。』
そう言って、お別れしたように、思います。
かめさんは、ちょっと、後ろを向いて、お池に消えて行きました。
そのさき、父の転勤とか、就職とか、いろいろあって、近くまで帰っても、お池には来ませんでした。
あるとき、30年ぶりくらいに、亀さんを思い出しました。
そうして、夕方、お池に参りました。
『かめさあん、しんちゃん、来たよう。』
まさか、ほんとに、亀さんが出てくるなんて、思いませんよね。
それが、足元から、ざわざわ、と、何かが動き、声がしたのです。
『しんちゃん、いらっしゃい。よくきたね。』
『え、亀さん?』
『はい、むかし、お世話になりました、亀さん、本名、かめごろです。おなつかしやあ。大きくなりましたね。』
亀さんは、首だけ出して、言いました。
『いやあ、ほんとに、亀さんなんだ。うわあ、うれしいなあ。やはり、亀さんは、長生きするんだ。』
『はい。でも、かめごろも、年を取りました。も、あまり、長くはない。いつか、しんちゃんが、来てくれると、信じて、生きてきました。』
『そうなんだ。』
ぼくは、かめごろに、近況報告しました。
両親は、亡くなったこと。
うまく、生きられなくなって、仕事は辞めたこと。
なんにも、やる気にならないこと。
たくさん、話しました。
かめごろは、『ふんふん』と言いながら、聞いてくれました。
『しんちゃん、つらかったね。お父上や、お母上には、お世話になりました。しんちゃんは、泣き虫で、弱虫でしたね。』
『ぶっ。はい。たしかに。』
『でも、こんなに、立派になって、かめごろは、うれしいなあ。再会できて、ほんとに、よかった。しんちゃん、は、かめごろより、長生きしなさい。かめごろは、いつまでも、しんちゃんの幸せを、祈ります。天国に、もし、行っても。』
『ありがとう。亀さん。いや、かめごろさん。』
ぼくたちは、暗くなるまで、思い出話をしました。
やがて、あたりは、夕闇のなかです。
『ああ、もう、帰らないと。バスが無くなる。』
『うん、しんちゃん、ありがとう。また来てくれたら、うれしいなあ。』
『ああ、来るよ。亀さん、それまで、元気で❗』
『しんちゃん、も。さようなら。』
やましんは、いろいろあって、まだ、その約束が、果たせておりません。
でも、必ず、また、行こうと思います。
かめごろさんが、それまで、長生きしてくれたら、良いな、と、思います。
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『かめごろ』 やましん(テンパー) @yamashin-2
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