03 そして出会う.(終)

「条件反射」


「え?」


 彼の口。囁く。


「条件反射。答えは、条件反射だ」


「あ、えと。条件反射。条件反射です」


 なんとか事なきを得た。席に座る。


 彼の目が、開く。


「ありがと。たすかった」


「たすかった、じゃねえよ」


「え?」


「言えよ。なんで、なんで黙ってたんだよ」


 うそ。


「これじゃ俺が、ばかみたいじゃねえかよ。隣にいるのに。気付かないなんて」


「気付いて」


 分かっている。


 彼も。


「気付いて、もらえないと、思った、から」


 涙が、あふれてくる。


「私は。ばかだから。せめて夢の中だけでもって。思った。から。私」


「泣くなよ。これからは俺が、夢の中で勉強を教えてやる。もう寝るぞ。まだ定着したかどうか分からんから、もう一回寝て起きてみないと」


「うえええ」


「泣くなって。授業中だから」


 うわっ。


 なんだこれ。


 夢の中。私は、いつでも寝れるの。あなたに逢うために。ずっと、あなたのそばにいるために。


 いや、起きろ起きろ。俺は寝起きでも勉強できるからいいけど、お前そういうのできないだろ。


 いいの。今、この一瞬だけでも。あなたといたい。


 夢の中で、いつもおまえ、こんな感じなのか。


 あ、ああ、そうか。もう、記憶持っていけるんだもんね。あんまり、いかがわしいこと、できないね。残念。


 いかがわしいこと、してたのか?


 秘密。


 とにかく起きろ。お前は今寝たらだめだから。


 ええ。でも。


 いいから。続きは、現実で、だ。

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幻想に導かれて 春嵐 @aiot3110

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