02 寝て.
眠る、彼の横顔。
じっと、見つめてた。
ずっと探し続けて。ようやく辿り着いた。彼と同じ学校。彼と同じクラス。彼の隣の席。
昔から、夢の中のできごとを、記憶することができる体質だった。夢は、現実とは違うけど、存在したり、見たり触ったりできる部分がある。
うまく説明できないけど、幻想的な何かが、夢の中には存在する。そして私は、それを見て、覚えたまま帰ってこれる。
夢の中では、現実とは異なる時間が流れていく。だから、彼が会っているのは、たぶん昨日の私。あなたに会うために、がんばって毎日、たくさん寝てる。10時間ぐらい。それに、寝ようと思ったときに、いつでも寝れる。
私にとっては、夢がすべて。そして、夢の中でも出会える、あなたがすべて。あなたに会うために、私はいる。あなたと共に、いるために。
でも。彼は私のことを覚えていない。気付きはしない。普通の人は、夢の中の幻想を、その記憶を、持ち帰ったりはできない。
私だけが知っている。彼との逢瀬を。夢の中の彼を。
それだけでよかった。
たとえ、現実で、見向きもしてくれなくても。
夢の中で、逢えたら。しあわせだから。それだけで。生きていける。明日を迎えようと、思える。
「あっ、はい」
彼の横顔ばかりを見ていたら、当てられてしまった。
「えっと、その」
夢の記憶を持ち帰れる代わりに、現実世界のことは、なにひとつ、覚えられなかった。
どうしよう。答えなんて、分からない。
彼の横顔。
幸せそうに、寝てる。
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